「あしたのジョー」はヤバイ1

何をトチ狂ったのか今更はまってしまいました。

あしたのジョー(1) (講談社漫画文庫)

あしたのジョー(1) (講談社漫画文庫)

今まで散々語りつくされている作品です。何も私が語る必要は無いでしょう、が、凄い。とりあえず頭の中のモヤモヤしたものを整理するつもりで、文庫版12巻についてを順繰りに語って生きたいと思います。
矢吹丈。東京のドヤ街に流れ着いた一匹狼。彼は一夜の宿を求めてそこに来ました。そして丹下段平に出会うのです。ジョーのパンチを見た丹下は彼に惚れこみ、ボクサーとして己の手で育て上げようとします。しかし丹下の意に反してジョーは詐欺事件を起こし、少年院に収監されてしまいます。
と、大まかに言うとこんなカンジ。ジョーはとかく人の言うことを聞きません。「ギターを持った渡り鳥」の如く、フラリと現れたものの、人を助けるでもなく、人から助けられるでもなく、周囲の誰彼かまわず敵を作り、ただただ殴り、蹴る。「行き場のない何か」「形のない何か」を拳にこめて打ち出すだけの日々です。
しかし仮にも文明社会・日本。ジョーの野生は文明的な方法、つまるところ「少年院」での「更正」というケージの中に閉じ込められたのです。それは「混沌」を嫌う、「野生」を嫌う文明による「猛獣狩り」に似ています。裁判官も警察もマスコミもジョーの持つ「野生」を理解しません。彼をキケンな犯罪少年とレッテルを貼り、オリの中に閉じ込めることで「シビライズ」しようとします。自分たちの「理解できるモノ」にしようとするのです。「更正」という名で…。
しかしジョーの無軌道は止まりません。少年院でも暴力沙汰を起こし、果ての果ての「特高少年院」へと送られることになります。ジョーの「野生」は文明というケージの中、檻の中に幾重にも幾重にも閉じ込められていきます。檻、四角い檻。しかしそれこそがジョーの希望の始まりだったのです。ジョーは檻の中で初めての好敵手に出会います。自分の前に立ちふさがる壁・力石徹(りきいしとおる)に。
徒手空拳」が実体を持った「他人」に初めて命中したのです。自分を受けとめ、拳を返してくれる「敵」が初めて目の前に現れたことでジョーに「方向」が生まれます。「あした」が生まれます。
そう、ジョーの「あした」は檻の中で芽吹いたのです。
そして、檻の中から出ることは終生ありませんでした。
リングという「檻」のなかから。
つづく