ああ杜牧

ああ、杜牧。
君、嘗て得たり薄幸の浮名。
浮名、ふわと揚州を出でて、
天明、何処へ去り行かん。

ああ、杜牧。
君、唐朝に引く手数多。
牛李共に君を愛し、
影ながら守り、要路へ導く。

ああ、杜牧。
君、歴史を語る。
いつか還る、いつか繰り返すその日を、

ああ、君よ、
ああ、杜牧。
君がもし、
君が言うよな歴史なら。

君は立つのか、
今も立つのか、
四百八十寺、
煙雨の内に、朦々と。

華厳経

いちの中にひゃくせんまんおくがあり、
ひゃくせんまんおくの中に、一がある。

ならば知れ。

この小刀のきっさきの、
その先端の、さきのさき。

ひゃくせんまんおくのなかのいちの、
そのなかのひゃくせんまんおくの、
さらにそのなかの、

中の、
なかの、
中のなか。

そこまでいけば、
そこから見れば、

きっとこの世は
きりとりほうだい。

どうも蓋

心は掛かるこの蓋よりぞ、
溢れ出もすれ、締まりもすれ。

なら常在の心は何処?

滔滔垂れ溢る情なりや、
きりりと締める我なりや。

有情非情も共に情、
ここにありてやここになし、

ああ、蓋。ああ蓋よ。

君のみが常に隣り合う、
君のみが情の可触民。

どうも、蓋。
しかり、蓋。

君こそが、あに、心ならんや。