ニシヘヒガシヘ

お日様のまぶしさが恨めしい日曜日。
「三千世界の烏を殺し、主と朝寝がしてみたい」
私の愛する東行(とうぎょう)先生*1の発句を思い出します。烏は朝を告げるだけで昼夜を創るわけではありません。そんな彼らを太陽の象徴とし、殺してしまえば朝は訪れないという発想は何か神話に近いものを感じさせますね。中国古代から見られ日本に伝来した「太陽の中の三本足の烏」*2のモチーフとの類似も興味深いです。
さて、モチーフといえば東行先生の雅号の由来は、かの平安時代の遁世僧・西行です。彼の出家名は浄土信仰から来ています。西方極楽浄土というように西に阿弥陀如来の住む世界がある。そこを求めていく、ということで西行です。しかし実際に彼が行ったのは東国・鎌倉で、源頼朝に会ったり、そこでもらったものを子供のおもちゃにあげたりしました。
でで、肝心の東行先生ですが、こちらは藩*3の命令で上海へ視察に。しかも死の間際までイギリス留学を望んだりと、こちらは西へと向かっております。かような名前と背反する二人です。700年近く離れておきながら背反する要素は共通しているのが、これまた興味深いですね。まあ、世界は繋がっているので西へ行けば東へ至り、東へ行けば西へいづれは至る。どちらも遠い旅なれど、地球の裏側ぐらいで会えるでしょう。烏の呼ぶ日の如く、無量光という阿弥陀如来の別名が象徴する日の如く。ニシヘヒガシヘぐるぐるぐるぐる回っても、いづれ至るは同じ岸。

*1:高杉晋作

*2:日本サッカー協会のマスコット・ヤタガラスもこれの派生キャラ

*3:長州藩