西山暗黒園遊会1

地方都市Kの郊外にある阪急沿線R駅。そこから西にそびえる山に向かって道なりに歩くと、次第に周囲の景色に竹林が混ざりだす。地方都市Kの郊外は竹の産地であるのでこういった景色はとりたてて珍しいものではない、しかし今日の場合は少し趣が違う。
「たしかにこの番地なんだが・・・」
男はひとりごちた。彼の名は山崎守人。豊中に住む平凡な会社員である。ただ、彼にはもう一つの顔があった。そして、今日この場所を訪れたのもその用向きである。「・・・ゴゥ」
刹那、竹の間を割って吹く風、その向きが変わった。
「だ、だれだ!」
男は叫ぶ。まさか、地元の連中が!?いや、この場所は昼間でも誰も通らない。あまつさえ今は夜。となれば・・・
(彼、か)
数秒の思考の後、男は落ち着いて風の向きが変わった方角に話しかける。
「来てるんでしょう、鎌倉カスター将軍」
竹薮ががさがさと揺れ、鎌倉カスター将軍と呼ばれた男がユラユラと揺れながら現れる。歳は三十ぐらいだろう、無精髭をアゴの周りに巡らし、原色のアイシャドウが眩しい。
「あらら、遅かったのね。安来ドジョウパイ大佐ぁ」
「申し訳ありません。R駅には特急が停まらないことを失念しておりまして。で、将軍。月で拾った卵男爵や安倍川餅長官はもうお着きですか?」
「うふふ、とっくヨ」
カスターはくねくねしながら答えた。一連の所作はこの男の癖、というか性癖らしい。

次回へは続かないかな。