「ドイッチェラント、ドイッチェラント、ユーバーアレス♪」
さて、こんだけやっておいてラング先生*1に未だに触れないのはネタとして取っておきたいからさ。今回はこれです。

ガソリン・ボーイ三人組 [DVD]

ガソリン・ボーイ三人組 [DVD]

日本でも公開時にブームを巻き起こした陽気なドイツオペレッタです。*2ガソリンスタンドで働く男三人組がふとしたきっかけで令嬢と知り合いになり、すったもんだで一人が彼女と結婚、三人とも彼女の父親の会社の重役になるという愉快なハッピーエンド。ドイツ映画というとラング先生やらマレーネ・ディートリッヒやらほら男爵やら怪奇もんばっかり注目されますがオペレッタ映画もなかなか優れていたのです。彼の名作「会議は踊る」も30年代前半の作品でこれと前後します。
しかし、ここでひとつ問題が。極東日本はともかくドイツ、とりわけ首都ベルリンは劇場の宝庫。年がら年中フォルクスビューネやらノレンドルフ劇場やらそこいらでオペレッタをふくめた演劇がばんばんやられていたわけです。何故ヴァーチャルなスクリーンで観劇せねばならないのでしょう?それはガソリンボーイだからです。
彼ら三人の仕事はガソリンスタンドの店員。つまり車が毎回やってくるわけです。劇場でこれを表現しようと思ったらなかなか陳腐なものになってしまわないでしょうか。少なくとも車の持つ陽気な疾走感を表すのは不可能のような気がします。しかし映画であれば野外での撮影も可能。さまざまな車がとっかえひっかえやってくる様子も問題なく絵にできます。演劇から映画が派生し、現代において独立した分野として存在しうるのはひとえに現実の世界をそのまま劇場に持ち込めるということにあるのではないでしょうか。それがヴァーチャルリアリティであっても、です。

*1:若き日の淀川長冶をひざの上に乗せてくれたカッコイイパイロット。というかドイツの映画監督

*2:映画化する場合はシネオペレッタっていうらしいね。しらんかった