會議は踊る [DVD]

會議は踊る [DVD]

前回までのあらすじ・・・は、置いといて。クリスティン(リリアン・ハーヴィ)はロシア皇帝アレクサンドル一世(ヴィリ・フリッチュ)に尻叩きの刑から救われ、彼といい仲になっていきます。そして彼の別宅に招待されるのです。この時迎えの馬車に乗りながら彼女が歌うのが「ただ一度だけ」。そう、これは行きずりの恋。しかも相手はツァーリです。叶うはずがありません。しかし馬車に乗りながら歌の内容に反して、このときの彼女はそのことを露とも考えていなかったでしょう。
この映画、ストーリーはそれほどひねっているわけではありません。また舞台背景がドラマティックでありながらこのひそやかな恋はそれほどドラマティックでも感傷的でもなく、ドタバタとした展開で進んでいきます。それにもかかわらず、いやそれだからこそウィーン会議の終わりとともに訪れるクリスティンとアレクサンドルの別れが心に響きます。アレクサンドルにとってクリスティンはなんでもない行きずりの恋の相手です。いや作品を見るうえではそんな認識すらしていないくらいの軽さです。一方クリスティンはロシアの皇后にでもなったかのような若さに任せた浮かれっぷり。皇帝を「アレクサンドル」と呼び捨てにする軽率さからも、彼女の若さ、無邪気さがうかがえます。この恋は取り返しのつく恋、いきずりの恋、「ただ一度」の恋です。どちらも傷つかない挨拶程度のふれあいにしか過ぎませんでした。皇帝に去られ肩を落とすクリスティンをなだめ、楽団が奏でる「ただ一度だけ」。この時はじめて彼女はこの歌の意味を実感を持って感じたのでしょう。でもそれもやはり「ただ一度」。明日とは言わないまでも、しばらくすれば思い出になるひと時にすぎない、そんな恋です。
まあ結局彼女、この後メッテルニヒの部下であるピペくんと付き合うことになると思うのですよ。何故なら、この二人が口論を始めると必ず楽団が通りかかるというという奇妙な特技がありますので。花はさえずり、小鳥は歌うといった朗らかさではなく、楽団がマーチするところにドイツオペレッタらしさがありますなぁ。