珈琲哀歌

珈琲の泡、蜘蛛の目をして僕を見る。
蜘蛛の目の珈琲の泡、ぷちぷちはぜる。
舌にとればごろごろと泡。舌苔の滑り台をするするすべる。
幾重もの複眼よさよならばいばい。明日に遭わぬ泡たちよ。二度と帰らぬみずのきまぐれよ。
恨みに思うなこの出会い。どうせどちらもきまぐれよ。
僕が泡に生まれたとて、僕の舌に乗ったれば、ぶちりつぶしたであろうよ。
蜘蛛の目はたわむれ。本気であるまい。左様ならばこのシャバは、なんと恨みの多き邦、いみじあさまし邦かいな。