バックは大阪城です。ちなみにこの謎の制服は「おジャ魔女どれみ♯(しゃーぷっ)」で出てきたあいこの制服姿です。詳しく言うと、あいちゃんの盟友・のぶこ*1によって描かれた小説の中に登場してくる服になります。本放送時は小学生だったおジャ魔女の面々も、終了から四年経った今は高校一年生…。こんな制服を着て登校しているやもしれませんね。
で、あいちゃんですが、キャラクター的には男勝りのスポーツパーソン(この言い方、なんか厭だ)として描かれています。そのため、おジャ魔女の中では男役的なポジションを割り振られていると思いがちです。私見では、周りのおジャ魔女たちは「彼女を最も女性的」と見ているフシがあります。以下に理由を。
フォロー
作中では、しばし彼女によるフォローの現場が見られます。確かに感情を体全体で表すのがあいちゃんの特色ですが。不用意な発言で人を傷つけることだけは決してしません。むしろそういう態度をたしなめたり、フォローにまわるパターンがはるかに多いのです。その回数は天然無敵キャラ・どれみ*2に次ぐほどです。しかも彼女の場合はどれみが天然自然に身につけているものを「こうあるべきだ」と意識して行っている節が見られるのです。調和のための配慮はおジャ魔女中、彼女が最も意識して行っているといえるでしょう。

“女性役”としてのあいこ
作中でおジャ魔女たちは様々な姿に変身します。あいこは男的なキャラなので男性に変身することがあるだろうと本編をチェックすると、その回数はほとんどありません。ハナちゃんの両親役に化けたときも、はづきが父親、あいこが母親になっています。この傾向はシリーズを通して一貫しています。
 例えば親友・のぶちゃんの作品の中ではあいこはいつも「あいこ」として描かれ、作者ののぶちゃんの方は「信彦」という男性キャラに自分を仮託してあいこと関わらせます。つまりのぶちゃんの意識では自分が「男役」であいこが「女役」なのです。これはのぶちゃんだけでなく、どれみとの間でも生じています。「もーッと」であいこが主役の芋掘りの話*3がありますが、そこでのあいこの妄想ではどれみが角帽のバンカラ役なのに対し、あいこはそれに寄り添う矢絣(やがすり)の女学生なのです。どれみの方でもこのあいこの意識を理解しているらしく「どっかーん」の『あいこのいちばん幸せな日』において魔法で自分を王子様、あいこをお姫様にしてダンスを踊るのです。それを見て仲間のおジャ魔女が誰も「逆じゃん」と突っ込んでいないことから、あいこが「女役」という位置付けは彼女の友人の間では不文律として存在していると私は考えます。

傷つきやすさ
あいこは全おジャ魔女中、最もナィーブで傷付きやすい面を持っています。はづき*4やももこ*5もしょっちゅう落ちこんでいますが、彼女たちの場合自分と周囲のギャップであり、溝の埋まりと共に解決するものです。しかしあいこの場合、両親の離婚という幼い頃に受けた傷があり、普段は行動的に、陽気に振舞えますが、根本的なところで一歩身を引いてしまうのです。「♯」でハナちゃんの世話をしているとき、どれみの母親にその事を指摘されるくだりがあります。「優しいから、相手を傷つけてしまわないよう、身を引いてしまうのだ」と。(後にハナちゃんにも「あいこはいい子すぎるよ」よ。と指摘される)そのためか、どこかしら他のおジャ魔女にない「危うさ」をあいこは持っているように思えます。はづきとは少し形が違いますが自分の中で悩み、溜めこみ、発散できないところがあり、悪い事に、最も重要な局面で、あいこは自分の意志を押さえてしまうのです。普段の陽気なあいこも真実の姿ですが、埋め難い傷を抱えた臆病な姿もまたあいこ自身なのです。彼女がどれみや仲間と出会い、自分の弱さに気付き、自分の望むもの(両親の再婚)のために動く事を決意し、それを得る。私にとってのおジャ魔女とは「変わりゆく妹尾あいこ」を主題とした物語でした。

相手に求めるもの
先ほどからしばしば触れていますが、のぶちゃんやどれみとあいこの関係は面白い構図を見せています。彼女の親友たちはあいことの関係性において、彼女のボーイッシュな面ではなく、彼女の女性らしさを求めています。一方のあいこがどれみやのぶこに求めているものは朗らかさや包容力ではないか、と考えます。
どれみものぶこも天然「ボケ」キャラであり、浮世離れした面があります。しかし、どれみは人との関係性の中に自分の世界を作り、のぶこは空想の中に自分の世界を作っています。浮世離れしていながら安定感があるのです。あいこは独自の感性を持ち、そこに安住している人間を好む傾向があります。そこにコミットする事でどれみとの場合はおジャ魔女として、のぶことの場合は空想の世界の「あいこ」として、己の足場を得る事が出来ました。また、双方のパートナーとも暴走しがちであり、そこに適切なツッコミを入れるというのもあいこの役割となっています。そう、漫才における「ツッコミ」とは女房役なのです。

これら諸要素から、あいこは自他共に認める、最も女性らしいおジャ魔女と言うことができるのではないでしょうか。しかしおジャ魔女を通して見るとどれみのモテっぷりは凄いな。はづきは盟友だし、あいこは女房役だし、おんぷは「おん×どれ」だし、ももこはアヒャだし、ハナちゃんとは擬制的母子関係だし、ぽっぷはシスコンだし。ということはどれみがいなければおジャ魔女は空中分解してしまうんだろうなぁ。これも人徳か…。
そんな中でも、私としてはどれみ×あいこの関係を推します。大阪にいるあいこの危機を魔法も何も使わず「あいちゃんが泣いてる!!」と悟って、通天閣に抱きしめに行く。ここまでの愛情表現は全シリーズ中でも屈指のものだし、二人の間柄でないと為し得ないものと思うからです。(…まあおんぷも人生の選択をどれみに委ねる*6ほど、その思いは熱いものがあると思うのですが)

オマケ
カラーイラストの方を見てて思ったのですが…。

高校一年だったらこれぐらいのタッパはあるわな。てことで高校一年版の等身を。

*1:あいこの友人で妄想、および虚言癖のある女性。小説が得意

*2:おジャ魔女どれみの主役。ステーキをこよなく愛するが作中で食べている場面は回想シーン一回きり

*3:この話では下記の矢絣あいこの他に、モンペ姿など、あいこの七変化が見られる

*4:どれみの親友で眼鏡キャラ。無印(第一作)では三人中トップの人気と主役話数を誇っていたが、瀬川おんぷの台頭やどれみの髪下ろしバージョンの登場とともに、アィデンティティが削られていった

*5:アメリカ帰りの帰国子女。当初は日米の価値観の違いに悩む「悩める女」キャラだったが、次第にただのアホキャラへと進化していった

*6:「どれみちゃんが魔女になるなら、私もなる」といって、自我の強いおんぷがどれみに人生の選択をさりげなくゆだねたシーン