この樹なんの樹ヒデ夕樹

秋は購買欲に駆られる不穏な季節。今日も温くも危険な風に誘われて、こんなものを買ってしまいました。

ヒデタ樹 スーパー・ベスト~海のトリトン/人造人間キカイダー~

ヒデタ樹 スーパー・ベスト~海のトリトン/人造人間キカイダー~

かの渡辺宙明をして類まれなる才能と言わしめた故・ヒデ夕樹のすべてがこの一枚に。トリトン*1キカイダー*2イナズマンF*3スパイダーマン*4、ついでにこの木なんの木気になる木*5。その活躍、勇姿のすべてがこのCDに収められています。「GO」というセリフを言わせたら、この人の右に出るものはいないお方で、
「GO、GO、トリットン!GO、GO、トリットン!!GOGOGOGOGO!トリットォーン!!!」(海のトリトン(ゴーゴートリトン)より)とか、
「チェンジィー、チェンジィー、GOGOGOGOォー!GOGOGOゥ!!」(ゴーゴーキカイダーより)など、
兎にも角にもGOづくしです!GOで押し切るその姿は偉大。普通、力技の歌詞を歌う人間は技量がないものだと思われますが、逆です。あまりに明け透けな歌詞はそのあけすけさ故、下手な歌い手だと、聞く人に恥ずかしさを感じさせ、気後れさせてしまいます。しかしヒデ夕樹の朗らか、かつ力強い歌声は力技を更なる高みに導き、人々を陶酔の域へと導きます。
他にも
「日本の平和を守るためぇ暗黒魔人をやっつけろー!!」(風よ光よより)
「人造人間キカイダぁーーーー(息継ぎほぼなし)チェンジィー、チェンジィー・・・」(ゴーゴーキカイダーより)
「たーてイナズマン地を蹴って、地獄ぅのデスっパーぶうぅっとばっせぇー」(フラッシュ!イナズマンより)
これらのパートの独自の息継ぎ、間のおき方、促音*6の表現法はヒデ夕樹だから成し得る表現だと思います。文章では表現できないものなんだな、コレ。書いちゃったけどさ。
これらの技は発声の強弱、明瞭さ、情感の適切な配置などのテクニックがないと成し得ない技なのです。ヒデ夕樹亡き今、その個性を強く伝承しているのは串田アキラでしょうか。渡辺宙明ヒデ夕樹との蜜月の後、後進として串田アキラを選んだのも納得がいくというものです。
その歌唱に酔いしれ、日本歌謡界が失った類稀なる才能を偲ぶ秋の夜長。この一枚は手放せません。

*1:冨野喜幸初の総監督作品。ひたすらトリトンの足とボーイソプラノ声に萌え狂うのが正しい鑑賞法

*2:安藤三男の怪演が光る名作。長坂秀佳が特撮界に君臨するきっかけとなった作品。ちなみに大学一年の夏から秋にこの作品に嵌った私は、主題歌「ゴーゴーキカイダー」を一日15回は歌っていた

*3:安藤三男の演技が光る特撮。脚本家の上原正三がラリっていたのか出てくる女性が必ず死ぬハードボィルドすぎる作品

*4:本邦初の変身ヒーローロボットもの。戦隊ものやジャスピオンの基礎となった。主役はヘドラー将軍

*5:いつも世界ふしぎ発見の後に流れる日立の曲

*6:「ッ」や「っ」で表される詰まった音