最近はそうでもないですけど、ジェイソンぐらいの時代のホラーってだいたい90分以下の尺でしたよね?今日はこの理由について考えてみたいと思います。
これら90分ホラーに共通する要素はみな「出オチ」だということです。そう、モンスターの正体が明らかになればそれがどんなに恐ろしいものでも視聴者の恐怖の対象とはならないのです。モンスターが首を出したり、引っ込めたり。入るのかいないのか分からない部分の曖昧さ、マージナルな部分に我々の恐怖回路は敏感な反応を示すのです。そのため、ジェイソンでは前半30分はえんえん楽しいキャンプとセックスライフ。で、次の30分で人が殺されていき、ようやく終盤30分でジェイソンが露骨な虐殺を始め、それと戦うアクションパートとなります。
これを見れば分かるように、「アクションパートはもはやホラーではない」のです。したがって我々がホラーをホラーとして見るのは、敵の正体が明らかになる前の1時間の部分だと考えます。
で、近年は尺の長いホラーが出てきているのですが、これには日本映画の手法が有効に働いていると思います。日本のホラーの基本はモンスターではなく怨霊です。したがって肉弾戦を好まず、もっぱらマジックパワーを駆使します。そのため終盤まで姿をあらわさず、物陰からマジックパワーでいたぶり続ける事ができるのです。「四谷怪談」のお岩にしても直接姿をあらわすのは希で、マジックパワーや眷族のネズミを使ってイエモンを倒します。
かように、日本ホラーは長尺に有効な構造をしており、観客の恐怖心を終盤まで引っ張る事ができるのです。