毒電波1

小山力也うたわれるものらじおの中で、しきりに仮面ライダーブラックRXに触れてくれるのがちかごろうれしいことの一つなmantrapriです、こんばんわ。霞のジョーを小山さんは忘れていなかったようですね。
http://d.hatena.ne.jp/mantrapri/20060923
さて、小山力也が主演を務める「うたわれるもの」ですが、製作元はエロゲー界中興の祖・Leafです。ビジュアルノベルという現代のエロゲー界のフォーマットとなっている形式を最初に取り入れ、以後のエロゲー界のみならずビジュアルノベル界を牽引していった偉大な存在です。発足当初の本社は兵庫県の伊丹にあります。そのため伊丹の名物を三つ挙げろといわれたときは


①惣構え城郭*1の祖・有岡城
②天下の名探偵・ヒゲオヤジ(伴俊作)*2
ビジュアルノベルの礎を築いた・Leaf


を挙げることにしています。偉大なり、伊丹。(空港は無しかよ・・・)


今回はリーフのビジュアルノベル第一弾「雫−しずく−」のヒロイン・新城沙織さんを書いてみましたです。バレー部に所属する彼女は、「雫」という作品ではパンピー代表として登場します。世界の破滅を妄想する主人公。授業中に「せっくす」を連呼して顔を掻き毟る女子高生。毒電波を発信する兄妹など、アレな連中の中に咲く一輪の花。それが新城沙織。通称さおりんなのです。
陽気で快活な彼女はちょっと電波入ってる(いろいろな意味で)主人公に協力して夜の学園に起こるいかがわしい事件の調査に乗り出します。最初は主人公を引っ張っていた彼女もちょっとした拍子に陽気な表面の顔が外れ、臆病な内側の顔を見せます。電波な主人公はそんな彼女の姿を見て、逆に「彼女を守らなければ」というありふれた感情を取り戻します。まあ、所詮主人公の電波がその程度と言ってしまえばそれまでなのですが、人間は誰しもこんなものではないでしょうか。
主人公は平凡な学園生活をすごしながら、心の中では世界の破滅を願っています。しかしそれは主人公が本質的にアブナイ奴だからではなく、彼が妄想の中で危機を作ることによって現実の平凡さと釣り合いを取っているからではないでしょうか。彼に妄想で思い浮かべたような危機が本当に迫ったときには、それと釣り合いを取るべく正常な思考回路が発動するのです。健全な環境は不健全な妄想の余地を残し、不健全な環境は健全な行動を強いるというヤツです。周囲の情勢に流されるのがが人間の常であり、そこに善悪や退廃はあまり関係ありません。しかし逆に周囲の状況に流されず健全であり続けたり、電波であり続ける人間は本当に恐ろしい存在であるといえるでしょう。
・・・それにつけてもさおりんはかわいいですな。スポーツマンでイケイケゴーゴーながら粗暴ではないし、人一倍気を使っている。ステレオタイプなキャラ付けがされていないトコがよいです。また次作「痕−きずあと−」のキャラである初音に受け継がれることになる特徴的なモミアゲも高評価ですね。
ちなみに「雫」にはゲーム本編と、「がくえんゆーとぴあ まなびストレート!」や「ニニンがシノブ伝」等のシリーズ構成をやっている金月龍之介氏によるノベライズ版があるのですが、私はノベライズの方が好きです。(あんだけ褒めといてそれかよ)その理由の一つが新城さんをメインヒロインとしてストーリーの主軸にすえている点です。主人公の孤独や新城さんの健全さともろさ、それらがきれいな形で纏められているのはノベルの方だと思います。また主人公の妄想と現実。そして自らが犠牲になることで大勢の人の思いを自分の中に抱え込み、真の孤独に耐える姿を描いているところにも共感がもてました。さおりんに萌え狂いたい人にはオススメです。
しかしビジュアルノベル界に燦然と歴史を残したのはゲーム本編でした。そして新城さんもゲーム中ではヒロインの一人に過ぎませんでした。何故か。
・・・電波だからです。
そう、ゲーム本編は電波あふれるただれた世界。その主軸にすえられるのは

当然強力な“毒”を発するもので無ければなりません。月島瑠璃子。明日はゲーム本編のメインヒロインである彼女と「毒」電波に触れて、何故ビジュアルノベルエロゲー界で花開いたのかを考えていきたいと思います。
つづく

*1:家臣の居住区を城の堀の中に囲い込む形式。いわゆる近世以降の城下町はこれに当ることが多く、堀の内側に居住区がある。最古の遺稿が兵庫県伊丹の有岡城で、JR伊丹駅を東限に伊丹市の中心街が有岡城内に納まっている

*2:手塚治虫漫画の初期の主役。友達の祖父がモデルらしい。私立探偵として手塚治虫の生涯を通してサブキャラクターとして活躍している。名実共に手塚スターシステムの代表