オルタナティブは閉じられた
人はいつでも二者択一(オルタナティブ)。
日常の大きなことから、小さなことまで選別し、道を進んでいく。
二度と還らない道を。
第一章はそんなオルタナティブの物語。
- 出版社/メーカー: サーカス
- 発売日: 2003/07/25
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ある双子は一人の男の子を好きになりました。それも、同時に。
二人は互いの気持ちを探りながら男の子に近づいていきました。
どちらを男の子は選ぶのか?
これは過去から今へのオルタナティブ。
男の子は数年後、女の子の一人が死んだことを知りました。
そして目の前に現れた一人。
この子はどちらなのでしょう。
これは今から過去へのオルタナティブ。
この二つのオルタナティブが交互に現れて、私たち傍観者は嫌がおうにもこの世界が選択肢でできていることを知ります。と、同時にその選択肢は既に閉じられていることも。そう、このお話は終わった過去の物語。選択肢によって未来を掴むことを許されないお話なのです。閉じられたオルタナティブ。
と、同時に二者択一を迫られるのは主観である男の子のみではありません。作中での双子。彼らの父。ありとあらゆる人間のオルタナティブを経由して、この作品は織り上げられているのです。そこには冷徹な目があるだけで、特権的な、絶対的な選択権を持つ人間は存在しません。なぜなら、事は既に終わってしまっているのですから。プレーヤーという傍観者はただ、彼らのオルタナティブの結末を見ることしかできないのです。
無限に演繹していくかに見えるオルタナティブの蜘蛛の糸。しかし観測地点から過去に遡る、昨日を帰納を以って見つめるとき、その行き着く先は蜘蛛の巣の中心しかない。そしてたどり着く、たった一つの真実。
双子のどちらが死んだのか。
その答えが導く、たった一つの未来。
男の子はどちらを愛するのか。
結末に双子は一人になりました。もはや二者択一はありません。そう、ふたりはひとつになったのだから。
男の子は残った一人の前に姿を現すことはもうないでしょう。選択肢は消えてしまったのだから。
そう、棺の蓋は二度と開かない。土塊から二度と死者は出てこない。
オルタナティブは閉じられた。
・・・水夏傑作。ありがとうtukinohaくん。