オヒルヤスミハウキウキForest

              お客はちらほら。
                   リドルはたくさん。
               フィナーレはひとつ。

Forest

Forest

ねんがんのエロゲー「Forest」をてにいれたぞ!*1
私がかねてから尊敬しているエロゲー批評家にjudge氏という方がおられます。今ではもうサイトを閉じられたのですが、その批評が持つ力は今でも忘れられないものがあります。私がネットに興味を持ったのも、氏の論考に触れたことが大きいです。
そんなjudgeさんの批評で殿堂入りした作品が数作。「らくえん 〜あいかわらずなぼく。の場合〜」や「腐り姫」など、決してメジャーではない作品の中にこの名前がありました。そう、ライアーソフトが世に送り出した「Forest」です。


新宿の街を舞台に繰り広げられるこのおはなし。
主人公は四人の女性と、一人の男、そして黒いアリス。
新宿に暮らし、新宿に寄生する彼らはある日の正午、アルタ前で一つの世界に巻き込まれます。
ビルの中から芽を出し、枝を張る木々。新宿の摩天楼は一瞬にして「森」へと変貌してしまったのです。そこで始まるティーパーティ。楽しいアリスのティーパーティ

「森」とその使者・黒いアリス。彼らは主人公たちに挑戦状を送ります。それが「リドル」。イギリス文学に依拠したあらゆる謎の断片「ギフト」。主人公たちはそれを組み合わせることで「森」を抜け出さなければならないのです。


模範解答はありません。
帰納法もダメ。
闇雲でも壁にごっつん。
彼らはお互いのギフトを組み合わせ、
想像し創造する必要があるのです。
森が、種を蒔き、芽を出すように。


この作品はとにかく凄いです。現実の新宿が異世界へと、異形のものへと変貌します。見慣れたさくらやもルミネもヨドバシカメラも、異空間への入り口にして出口。いやそもそも新宿が丸ごと異界なのです。そしてその異界が根を張り、枝を伸ばし、葉をつける。その養分となっているのは膨大なイギリス文学の原典*2たち。
異空間へと翻弄される我々に、主人公たちも着地点を与えてくれません。主観がどんどん入れ替わり、衣装がころころ変化する。主人公たちもまた新宿という巨大な「森」の一部。そこから逃れようとしても逃れられない寄生虫。世界が、人が、ふわふわ漂う「Forest」の世界。その世界の定点もまた「新宿」なのです。
異形であるゆえに、その日常性を残す部分が際立つ。新宿の風景たちは我々に居心地の悪さを提供しつつも、変わらぬ姿を浮き立たせる。そう、この物語は「新宿」が中心。ゲームの背景が「森」の衣装をまとい、登場人物すら押しのけて、舞台の中央に躍り出る。そんな奇跡のようなゲーム。
万人にはオススメできません。しかし私はオススメします。
万人ではない、あなたに。
続報はいずれ。

http://judge13.blog57.fc2.com/blog-entry-98.html
http://www.game-style.jp/gyutto/200703/09/01gyt_to.php

*1:ロマサガ風に

*2:私が現時点で確認できたのは「不思議の国のアリス」「ロビンソン・クルーソー」「蝿の王」「メアリー・ポピンズ」「ナルニア国物語」「ゲド戦記」「真夏の夜の夢」「ピーターパン」「ベニスの商人」「ピーターラビット」「ロード・オブ・ザ・リング」のみで、多分まだまだある。うう、judge氏のページが閉鎖されたのが恨めしい