東方のニコニコ動画での影響力2

ニコニコ動画の黎明期を代表する作品を挙げるとすれば
レッツゴー!陰陽師
「あいつこそがテニスの王子様
きしめん
そして、コレ。

他の作品が本編、ないしはオープニングであったにもかかわらず、「魔理沙は大変なものを盗んでいきました」だけは歌も映像も純然たるマッドだったのです。このことが以後のニコニコ動画における東方の裾野の広さを位置づける点となったのです。
複合体(キメラ)としての。


東方という作品がシューティングゲームであるということは先ほど述べました。このゲームは音楽、弾幕の見事さもさることながらキャラクターの魅力、いわゆるキャラ立ちにおいても特筆すべき点があります。しかし、ゲーム本編でのキャラクターは抽象的なセリフを喋り、設定、属性についての細かい解釈はプレイヤーに任される部分が多くなります。
そのため同人の際に作り手の想像力を刺激し、多くの解釈や設定、キャラ付けがなされ、作品世界が広がりを持つようになったのです。最初からガチガチの設定と分かりやすいキャラ付けがなされ、余すところなく開示されていたらばココまでの広がりはなかったと思います。この「秘するが花」という「風姿花伝」のような精神が東方の人気と広がりの一因ではないかと考えます。
またバトルミュージックがそのまま登場するキャラクターのテーマソングとなっている点も大きいです。音楽を聴けば、「ああ、これはゆかりんのテーマ!」という風にキャラクター=音楽という思考回路が成立します。キャラ萌えのための属性の一つとしてテーマソングが組み込まれ、それが抜群にカッコイイのです。そのため音楽媒体においてもキャラクターソングにするため、同人で歌詞をつけたり、そのキャラクターが動くミュージッククリップを作って挟み込んだりするのです。
以上の2点。
1.キャラクターの解釈の広さ
2.キャラクターと音楽の一体化
これらが一体化した同人映像が「魔理沙は大変なものを盗んでいきました」なのです。この歌はアリス・マーガトロイドというキャラクターのボス戦の音楽「人形裁判」に歌詞をつけたものです。かつ、アリスの弾幕攻撃や魔理沙への思い、パチュリー・ノーレッジとの三角関係という公式、同人ない交ぜになった設定を織り込んだミュージッククリップが挿入されています。
そう、黎明期のニコニコ動画の中でもこの作品こそ純度、濃度の最も濃い、同人を基にした同人の同人による同人音楽映像媒体だったのです。これは重要です。他の作品とは違い、最初から複合体(キメラ)だったこの作品は、映像の化学反応を楽しむニコニコ動画を象徴する作品だったのです。
陰陽師」はダンスと歌詞解釈とマッド風味。「テニミュ」と「きしめん」は歌詞解釈に面白さが特化した作品であったのに対し、「魔理沙」は


1同人の複合。
→何人ものユーザによる二次創作の複合。典拠も同人。中でも原曲と映像の作り手が乖離している点が重要。
2視聴者ないしはユーザーによる自由なケミストリー
→ことに「魔理沙」の映像の手作り感が「自分にもできるかも」とニコニコユーザーに感じさせ、既存の音楽と映像の融合だけでなく、オリジナルの音楽、オリジナルの映像をニコニコに発信する推進力になったのではないか。


という現代のニコニコの表現の主流。つまりは複合体(キメラ)の面白さを最初から示していたのです。

次回も、これまた東方を通して現在のニコニコの動画のバラエティと今後の流れを考えてみたいと思います。