藤原はづきの影がシリーズが進むにつれて薄くなっていった最大の原因が、「女性」を表すキャラクターという点にあります。
まあ、実際初期メンバーの服装を見てもらえば分かりますが、どれみは短パン、あいこはツナギ。どちらも男女入れ替え可能な服装です。で、我等がはづき氏はオレンジのリボンにスカート。三人の中では唯一フェミニンな服装となっています。そんな服装のほかにも、ホワホワした性格や、メガネ属性などで、他の二人が担当している活発、ドジ、スポーティな部分を補う「女性」の役割を担当していたのが藤原はづきではなかったかと考える次第です。
本当ははづきが一番暴走しているにもかかわらず、その服装と役割から「女性的」なキャラクターを割り振られていました。これがはづきにとって幸福なことかどうかは分かりませんが、少なくとも無印の三人の中で彼女の個性を際立たせていたとはいえるでしょう。
では、これらの藤原はづきを形作る個性が無印以降、どのように奪われていったのかを考えてみます。
①のお嬢様の部分ですが、これは瀬川おんぷの台頭によって脅かされてきます。お嬢様とはすなわち非日常の象徴です。どれみやあいこの家庭は現実に即したものですが、はづきのそれは一つの道具立てとして、作中世界に新鮮なシチュエーションをもたらします。金持ちゆえの服装、家庭環境、行動。これらの属性は視聴者一般の生活とは離れた非日常なものとして、捉えられます。
しかし瀬川おんぷチャイドルという家庭環境が藤原はづきの持つ特殊性を吹き飛ばしてしまいました。それに追い討ちをかけるようにもーっとで登場してくる飛鳥ももこの帰国子女という設定やダッチオーブンのあるアメリカンハウスといった特殊な、ある意味類型化されない家庭環境は、ただの「金持ち」という藤原はづきの属性を、一般的なありきたりなものとして背景に追いやることになってしまったのです。
次に②の天然キャラですが、これはハナちゃんと飛鳥ももこにお株を奪われることになります。ハナちゃんは赤ん坊です。その存在そのものが天然といえましょう。また飛鳥ももこははづきが担当していたアクティブなボケを簒奪し、あまつさえその上にネィティブイングリッシュとナマコと「アヒャ語」のトッピングまで加え、アクティブなボケを完全に己のものとしてしまいます。おまけにはづきの相方であったどれみも「もーっと」以降はももこと同じクラスになり、鉄壁のボケ×ボケコンビすら、どれみと同じクラスになったももこへと奪われてしまいました。
世のおジャ魔女識者は「もーっと」によるクラス分けで漫才コンビが解消したのはSOSトリオだけかとお思いでしょうが、地下で、人知れず、妹尾あいこにのみ気づかれながら活動していたボケボケ漫才コンビもここに解消していたのです。
そして③。これも奪ったのはおんぷとももこです。そう、彼女たちはスカート!!しかもはづきよりも個性的な!そして彼女たちだけではありません。最大の盟友・どれみが真っ先にはづきの追い落としへと加担しているのです。そう「♯」。ここではどれみの母性を象徴するシーンとして、彼女の束ねていた髪が下ろされるシーンが何度も出てきます。わたしもそれまでは、「面白い自称美少女のお団子」だとどれみを捉えていたのですが、その回以降は「面白い美少女のお団子」と認識を改めました。ハイ。
そしてこれによってどれみの属性に「女性性」「母性」が加味されることになり、無印では藤原はづきのみが持っていた性質が分割されることになるのです。
無印初期メンバーの3キャラのうち、藤原はづきのみが属性を分割され、奪われていったことがお分かりでしょう。これは藤原はづきが悪いのではなく、彼女の持つ属性が普遍的であるために、それだけいっそう分割可能だったことにあります。
そう、はづきは悪くない!!多分。