弾幕アイディア創出法

どうも、ようやく涼しくなってきて過ごしやすくなった気がします。mantrapriです。
私は日々東方シリーズで弾幕修行に明け暮れている毎日であります。過去作品の製品版も届きましたし、後は最新作の『東方風神録』が委託販売されるのを待つのみです。
弾幕は私たちに多くのことを教えてくれます。それは人生の処世訓のみに止まらず、創造的な分野にも応用できる汎用性の高いものなのです。具体的に言えば「アイディアの作り方」、そして「引き出しの広げ方」です。今回は東方過去三作の5面ボスを通して、アイディアの作り方、引き出しの広げ方はどのように行えばいいのかを考えてみます。
えー東方5面ボスはこのようなメンツになっております。
・『東方紅魔郷十六夜咲夜
・『東方妖々夢魂魄妖夢
・『東方永夜抄鈴仙・優曇華院・イナバ
東方シリーズはシリーズというだけあって、それぞれの面に共通性があります。3面は体験版の最後の面なので音楽に良作が多い、とか。4面はやたらボスまでの道のりが長い、とか。6面はボス以外の部分が短く、ボス戦闘に大半の時間が割かれる、とかです。
今回取り上げる5面。その共通性はズバリ「スローモーションでトリッキーな攻撃」です。
紅魔郷の咲夜は時を止めて、ナイフを自機の周囲に放ちます。妖々夢妖夢はすばやい動きで剣戟を繰り出しますし、うどんゲインは狂気の瞳によって弾幕の動きをゆがめて見せます。
ここで重要なのは、これらのトリッキーな発想はすべて画面の弾幕の処理速度を変えることによって生み出しているということなのです。ここにアイディア作りのヒントがあります。
つまり5面ボスの多彩な攻撃の発想には、「このボスの性格はこうだから、こういった画面処理を使おう」という発想ではなく、「この面は画面処理を変化させるのがコンセプトだから、それにあわせたボスの性格付けをしよう」という発想で作られていることです。我々が作品から発想する手順とは逆の順序で5面ボスのキャラ付けはされているのです。
と、同時に我々が二次創作をする際に陥りやすい罠がここにあります。
我々はついついキャラクターを重んじがちです。咲夜さんがナイフ投げメイド、妖夢は庭師剣士、優曇華は狂気の宇宙兎。そういったキャラの属性を重視し、それを模倣します。しかしこれらのキャラクターをZUN氏が生み出す際、まず前提にあったのは彼らの属性ではなく、彼らが活躍する5面の性質だったのではないでしょうか。
弾幕の処理速度を変化させるという5面の性質。そこに立脚し、どのようにしたら新奇な見せ方でボス戦を彩れるか。そう、弾幕中心で発想したときに初めて彼らの時を止める、すばやい剣戟、狂気の瞳などの発想が結実し、キャラクターの個性を形成するに至ったのです。キャラクターから発想が始まったのではないのです。おそらく。
弾幕の処理速度を変える」。このような事柄にどれだけの意味を見出せるか。それがアイディアマンといわれる人間とそうでない人間の差になってくると私は考えます。この抽象的なスタートから、
①時を止める②素早い剣戟③狂気の瞳による弾幕のゆがみ
など枝葉のさまざまな魅力的な属性が発想されていくのです。そう、アイディアは枝葉末葉の属性を模倣していたのでは類型的なものしか創造し得ない。抽象から具象へのアクロバティックなひらめきを要求されるのです。
二次創作をする人間が一次創作へとなかなか移行し得ない理由の一つに抽象から具象へのひらめきに思いをいたさず、属性のみに注目して終わってしまうということが、あるのではないでしょうか。弾幕の処理速度の変化という抽象的、かつ必然的な事柄を理由付け、なおかつキャラ萌えに昇華(具体化)させる技術。この発想の飛躍こそが魅力的な一次創作には、ある程度不可欠ではないかと考えます。