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ということで鬼さんの続き。
色の階調わけもできてだいぶ完成に近づいてきました伊吹萃香です。往復の旅行記双方で伊吹山について触れているのも、これの伏線だったりします。ハイ、そこで鬼の話。
鬼退治といえば酒呑童子の大江山が著名です。しかし酒呑童子説話には三種類の山が登場します。
①丹波大江山
②丹後大江山
③伊吹山
まず①ですが、これは京都市と亀岡市の中間にある山です。ここは大江氏の名前の由来となっていまして、源頼朝のブレーン・大江広元や毛利元就(大江広元の四男・毛利季光が相模国毛利に住んだことからこの名字となる)の先祖はここの地名を取って名字としました。またこの地では四堺祭という都の四方の国境から疫気が入ることを防ぐ祭が行われていました。また酒呑童子の首塚も残されていたり、盗賊が頻出することから、ここが酒呑童子という鬼=疫鬼の発生地と考えられます。
で、②です。この山は北近畿タンゴ鉄道沿線にある山で、京都市から相当の距離があります。酒呑童子が都から姫をさらったり、源頼光たちが退治しに行くには少々遠すぎるきらいがあります。しかし、兵庫県の逸翁美術館*1所蔵の『大江山絵詞』は酒呑童子説話の最古の本ですが、ここでの山は①の大江山が採られています。
最後の③です。これは東京のサントリー美術館*2所蔵の『酒伝童子絵巻』が採用しています。この話の元には柏原弥三郎という鎌倉時代の地頭を退治した話や、都の北西という「鬼門」の位置にあることから導き出されたと考えられます。でで、東方シリーズの作者・ZUN氏はこの「酒伝童子絵巻」を採用し、“伊吹”萃香としたのだと考えられますね。東方は奥が深い。
次回で完成でしょうが、その際には長野県戸隠山との関連について触れたいと思います。