抗告

は、はぅあっ!!コミック版『皇国の守護者』打ち切りっ!?

皇国の守護者 1 (ヤングジャンプコミックス)

皇国の守護者 1 (ヤングジャンプコミックス)

ああ、残念。いい作品だったんだけどなぁ。うーん。何がいいかって。通商において優位にある皇国が、帝国に対して経済封鎖などの対抗政策を取っていないこととか、かなり幅広く通商している隣接国家である皇国に対する帝国の首脳陣の無理解とか、原作における戦史以外の不自然なところが上手くオミットされてるトコ。
…というのは冗談です。なにより絵がいいんだなぁ。私の好きな絵です。マンガしかり、主にエロゲーで顕著なんですが、男女の書き分けのバランスってなかなか難しい問題なんですね。女性が上手くても男がフラットすぎたり、男が上手いと、女のパーツも一つ一つが細かく、ごっつかったり…。ただ個性をはっきり出して、アメコミ調にリアルに描く、というのではなく。女性なら凹凸を強調せず、逆に男性ならば骨格の差異を顕著にするといったある程度日本のマンガ文法にのっとったデフォルメの施された書き分けを私は好みます。
この作者の方はそれが抜群に上手い。安彦良和に勝るとも劣らない男女の書き分けの上手さだと思います。あまりにも書き分けすぎると、男女が別世界の住民になって違和感が出るのですが、同じ空気の元に並べても違和感のない、絶妙なバランスを維持しております。主人公の新城直衛(しんじょうなおえ)の顔のバランスがまた絶妙。
原作の小説ではダイターン3ボトムズでお馴染みの塩山紀生がキャラクターを描いているんですが、こちらは『マッドブル2000』の主人公のヒゲを抜いたような面構えです。ごっついです。一方のマンガ版は『ONE PEACE』にでも出てきそうな黒目、鼻の平凡な造形なんだけど、これがむさい男や、花のあるユーリアの間に置くと映える映える。一種の真空状態とも言える個性の出し方です。で、このフラットなお顔が一番イカレた人間の表皮にくっついているというアンビバレンツ、たまりません。恐怖に打ち震え、顔を歪ませて笑う描写、フラットなものが形を変えるときのダイナミズムをよく理解していないとあのキャラ設定はできません。
…だもんで、本当に残念です。