雪の寒さを知っている。
雪の黒さを知っている。
雪の重さを知っている。
だから私は雪を知っている、
のか?

雪は円環を繰り返す、秩序の一形態だ。
私の胃液かもしれないし、唾液かもしれなかったものだ。ぐるぐる地球を周回移動する普遍だ。
それが親切にも新雪の形を取ってくれたのだ。

だけど、だからこそ我々は雪を知らない。
雪が我々の体内(なか)を円環していたことも、遠い昔の私の体だったことも、知らない。
我々はそうやって乳離れさせられて、ヒトという孤島に住むのだ。島宇宙の島地球の島日本の島男の島固体。

そして結局知っていくのだ。
ガガーリンにでもならない限り、ホントウの乳離れはできないことを。

我々は決して一人になれないはらから。こころから。