つみつみ

最近更新が滞っておりました。
本日もリュディア王クロイソスの資料にするために、コレ見ました。

トロイ 特別版 〈2枚組〉 [DVD]

トロイ 特別版 〈2枚組〉 [DVD]

ええっと、アキレスがひたすら喧嘩したり、アイネアス*1カメオ出演したり、トロイア側のパリスとヘクトールヘレネさらったり、約束破ってスパルタ王を殺したりと卑劣なくせに、なぜか同情的に描かれているのに対して、ギリシア側のアガメムノンはアキレスと仲が悪いだけで扱いが酷いのがあんまりにもあんまりでした。これが主役(アキレス)補正というやつか。
で、今回の舞台トロイアアナトリア半島の端っこに位置します。と、いうことでアナトリア半島を支配したリュディア王の参考になるかなぁと思ったのですが、彼等の戦闘はギリシアと同じ重装歩兵主体で、リュディアの槍の騎兵主体の戦闘*2とは違うみたいです。あと、民族的にもギリシアと北方のフリュギアが混血したリュディア人とちがって、ギリシア人に極めてちかい民族っぽいので、あんまり参考になりませんでした。*3ああ、でもトロイアの王族が装身具にしていたラピス・ラズリの金工品はきれいだったなぁ。あとブルーを基調としたギリシアの衣装とか。トロイア側の鎧もかっこよかった。
一番参考になったのは、作中で何度も出てくる火葬シーンでした。
この作品、トロイア戦争を扱っているだけあって戦死者の火葬シーンが何度も出てきます。映画の都合で本当は死んでないのに無理やり殺されちゃったヘレネの元夫・メネラーオス*4の火葬に始まり、ヘクトール、アキレスの火葬と、火葬シーンのオンパレードです。これが大いに助かった。なぜかといいますと、
http://www.louvre.fr/llv/oeuvres/detail_notice.jsp?CONTENT%3C%3Ecnt_id=10134198673379761&CURRENT_LLV_NOTICE%3C%3Ecnt_id=10134198673379761&FOLDER%3C%3Efolder_id=9852723696500785&baseIndex=6&bmLocale=ja_JP
こちらはルーブル美術館に所蔵されているクロイソスへの火刑の様子を表した壺なんです。これが近い時代においてクロイソスの肖像を伝える(といってもイメージですが。服ももろギリシア風だし)唯一のものです。この火刑のシーンの祭壇の積み方が、この絵だと省略されすぎで、キャンプファイヤー風味になってイヤなのです。私的にはこの火刑のシーンをマンガのメインにしようと思っており、具体的な木の組み方イメージが重要になってきます。
この処刑はペルシア側によって行われるのですが、拝火壇にしてしまうとギャグになります。何故ならゾロアスター教では火は神聖なものであり、人間を焼くことによって汚すわけにはいかないのです。よって死体の処理方法は鳥葬になります。ゾロアスター教シンパの私としては、拝火教だからってほいほいと火を使うわけには参りません。
そうなると、ギリシアの風土をかなり受容していたリュディア人の処刑方法としては、クロイソス本人が望んでギリシア風の火葬になぞらえたものになったと考えるほうがしっくりきます。
長くなりましたがこんなわけで火葬シーンが多いこの映画は非常に役に立ちました。中でもアキレスの火葬の際の祭壇はかなり高さがあるので、イメージ的にぴったりです。
そんな感じで鋭意製作中です。といってもまだプロットと下書き段階だけど。

*1:ローマ人の祖。実はトロイ難民

*2:ヘロドトスの証言

*3:まあ、リュディア人自体がペルセポリスのアパダーナ朝貢図やヘロドトスの『歴史』をみるとギリシア人に近い格好をしているのだが…

*4:本当はトロイア陥落後、ヘレネを奪い返して二人でキャッキャウフフと遊び暮らすというエンド。『グリュンヒルデの復讐』なんかに見られるように「騒乱を起こした元凶は女であってもそれ相応の報いを受けるべき」と考えたアングロサクソン・ゲルマンの倫理観には、地中海的なおおらかさはマッチしなかったのかしらん。王族の女性はみんな略奪され、ギリシアの諸王の妾になる設定なのに、映画では秘密の抜け穴から脱走しておった。あの穴はどこへ続いているのだろうか…