…岩明均に、釣られたっ!!

つられたっ!岩明均に釣られたっっ!!

将軍のうちで最も戦争に勇名を馳せ、詭計(きけい)と策略で功績の大部分を挙げた人々は、いずれも片目であった。
それはフィリッポスとアンティゴノスとハンニバルとここに書くセルトリーウスである。
         『プルターク英雄伝』セルトリーウス、エウメネスの章

ヒストリエ(5) (アフタヌーンKC)

ヒストリエ(5) (アフタヌーンKC)

何がといいますと、この巻で商人・アンティゴノスが○○の偽名であったことが判明するのです。
私が三年前に書いた記事を見てください。
アンティゴノス朝マケドニア - マントラプリの生涯原液35度
この段階では、私は商人アンティゴノスのことを、後にアンティゴノス朝マケドニアの始祖となるアンティゴノスのことだと思っていました。


今んとこかっこえーなーって思ったのはアンティゴノスですね。彼はアレクサンダーの死後、アンティゴノス朝マケドニアを建国しエウメネスの終生のライバルになるんですが、いまのとこは怪しげな眼帯のオッちゃんですな。ただ、岩明均の描く人間(特に危ないヤツ)に特徴的なひし形の目や、その下の隈なんかが只者ではない感じをかもし出しています。次の四巻では回想シーン終わって出てくるのかなー。

こんな風に言ってますしね。で、私がこう判断したもう一つの理由として、アンティゴノスが眼帯姿で描かれている点です。
ローマ帝政期に編纂された列伝・『プルターク英雄伝』。エウメネスの巻において、プルターク(プルタルコス)はアンティゴノスについて触れています。そこでアンティゴノスは隻眼について触れ、その身体的特徴をハンニバルが隻眼であったことと対比して、英雄の身体的特徴のひとつと述べています。さて、ハンニバルと来て思い浮かぶのが…

ヘウレーカ (ジェッツコミックス)

ヘウレーカ (ジェッツコミックス)

おなじく岩明均の『ヘウレーカ』。カルタゴの将軍ハンニバルによるローマ侵攻。それによって生じたローマとシラクサの戦いを描いた佳作です。この作品中に登場するハンニバルは片目があらぬ方向を向いています。つまり、岩明均ハンニバルが隻眼であったことを知悉していたことが伺えます。
で、今回の連載『ヒストリエ』。これはプルターク英雄伝のエウメネスの章を底本としています。しかもハンニバルとアンティゴノスの隻眼という共通点について触れているのはこの章なのです。これらを当然岩明均は踏まえ、その上で餌に食いつかせている。
これに引っ掛けられるのは、

1.アンティゴノス朝マケドニアという国と始祖を知っていて、
2.『ヘウレーカ』を読んでいて、岩明均が隻眼をちゃんと描写する作家だと知っており、
3.『プルターク英雄伝』での対比を知っているという、

日本でも千人いるかいないかのかなり限定された人間に対する「釣り」となります。どう考えても、あの「アンティゴノス」だと思うじゃないですかぁ…。でも、正体だった○○も隻眼なんですよね。そして、よく見れば「対比」されて…いる。*1
あー、完っ全っに嵌められたぁっ!!釣り方が玄人過ぎる。というか「玄人専門のルアーで、釣っている!!」
何でこんな玄人向けの「釣り」をしたのでしょう…。うーむ、凄すぎる。三年以上釣られていたのも、ある意味「果報」なのかもしれません。

*1:アンティゴノスと○○、両人が同い年ということが、さらにたち悪い…