私の小さなころから

私の小さなころから、テレビは現状への不満を述べていた。
私の小さなころから、政治は現状を嘆いていた。

私の小さなころから、私たちは不満の中に住んでいた。

井戸端の会話にある、軽やかな不満も、日々の細やかな愚痴も、不満を基軸とした公論の演繹の如く扱われ、つまらぬ糸へとたぐられていった。
それが日本人を日本人たらしめているように、私には見えた。
不満を言うことが特権のように設えられ、さながらプロテストであるかのように、纏うのが正装であるかのように。

私は、不満といたくはない。
不満で結びつきたくはない。
これ以上に不満をアイデンティティーにしたくはないのだ。

私は怒りが欲しい。
緩やかならざる怒りが欲しい。
なにものにも纏えぬ、誰もが繕えぬ、私の怒りを持ちたい。

不満を斥け、怒りを迎えよ。
各々が怒りによって結び、別れる社会へと、再び立ち入りたいのだ。