複数盆に還らず

複数盆に還らず。
三人寄れば文殊の智恵だが、船頭多くして、船山に登る。
複数は危険さね。貴方は貴方でなくなりあなたへ行く。
だが、複数は消えない。三人は解消できるが、複数は複数のまま続く。その崩壊ののちも、まだ複数は、個になりつつも複数のままありつづける。
ヒトは一人に還れない、複数の存心が行き続ける。
忌むべきレギオンを消し去るには、ヒトは複数になる前を思い出さねばならない。
でも、複数盆に還らず。人は人に預けた人格の数を、涙の訳を忘れてしまう。
複数盆に還らず。畏るべし。己の姿を。
恐るべし。人という虚構を。共通項を。