ダイエー帝国の世界

80日間世界一周 [DVD]

80日間世界一周 [DVD]

西洋俳優・世界一周の旅。
ちゅうことで一月中はシャーリー・マクレーン関連作品を絨毯爆撃的に攻めることと相成りました。で、本作。
1958年に公開されたこの作品はジュール・ヴェルヌ原作を映画化したものです。英国紳士のフォッグ氏が執事のパスパルトゥ、インドの王女・アウダ、フォッグを付けねらうフィックス刑事の3人と世界一周を行う、というもの。
本作品はトッドAO方式というワイドスクリーン技術を導入したことや、アカデミー賞5部門を受賞したことでも著名なのですが、後世の映画作りに大きな影響を与えた点がもうひとつ。
それは「カメオ出演」という概念を創出したこと。
カメオ出演とは、有名俳優が主演以外のチョイ役で映画に出演することを言います。この作品は58年当時の有名俳優30人以上が、上映時間3時間の中でカメオ出演するという豪勢振りです。
現代の我々にもおなじみな俳優ではマレーネ・ディートリッヒバスター・キートンフランク・シナトラジョン・キャラダインなどなど。しかも、面白い、というか凝っている点として、多くの俳優が登場するシーンはその俳優の出身国に準拠している点です。イギリスではイギリスの俳優、フランスではフランスの俳優、スペインではスペインの俳優をカメオ出演させるというように地産地消(ちとちがうか)を心がけた小にくい演出。まさに俳優でめぐる世界一周旅行なわけです。
ただし、西欧諸国以外では、このカメオ出演の枠組みは怪しいものとなってきます。インドの姫は生粋のアメリカ人のシャーリー・マクレーンを使ったり、日本を訪れても日本の俳優が出てこないなど、はなはだオチデント中心の世界一周。
まぁ、それもそのはず。彼らが巡る世界はイギリス→インド→香港→アメリカなどの大英帝国の植民地。ないしは元植民地。この作品の設定である1872年は、まさに大英帝国が世界の海を支配している時期なのです。この映画は華やかであった大英帝国への、子供・アメリカからの哀別の辞をも含んでいるような気がします。そう、大英帝国は戦後、没落を続けていくのですから。
で、本作のシャーリー・マクレーンですが、基本的な役割はコスプレです。最初はインドのサリー、次は中国服風のドレス、アメリカの貴婦人スタイル、最後は白無垢のサリーと、世界を移動するごとに服が変わります。風土、風俗をコスプレであらわす貴重な役ですね。執事のパスパルトゥもシーンに応じたコスプレを展開するので、この二人は身をもって世界一周を表現しているといえましょう。
シャーリー・マクレーンは本作が銀幕デビュー三作目なのですが、本作のような大作に「なぜ、選ばれたのかわからん」と率直に語っています。私が思うに、
くっきりしたマユゲがインド人っぽかったからじゃないか、と。

最後に。本作品はイギリス人やらフランス人はしっかり現地俳優を現地人役で使っているのですが、ドイツ人俳優に関してははなはだいい加減です。マレーネ・ディートリッヒなんかもアメリカ人役です。まあ、そんな中でも日本人役をやらされ「お金がないとヨコハマはたのしめませんよ」などと、おそらく本人は行ったこともないであろうヨコハマの紹介をしているのが、

暗殺者の家 [DVD]

暗殺者の家 [DVD]

ピーター・ローレです。