北国野郎の故郷

1月は映画月間ということで、シャーリー・マクレーン石井輝男特集でお送りしています。
「両者の関係は?」
「とくにない」

網走番外地 [DVD]

網走番外地 [DVD]

石井輝男監督、高倉健主演のヤクザ映画です。また、高倉健がスターダムにのしあがるきっかけとなった作品でもあります。
現代では寡黙なイメージで、日本の硬派の代表とでも言うべき高倉健ですが、60年代のこの作品や『顔役』なんかを見ると、兄貴分の男を慕い、「アニキに殺されるなら本望だよ」と言って、犬のようにもぶれさがる「かわいい」健さんの姿がうかがえます。私はどちらかと言えば後年の「肩で語る」健さんより、先走りがちで一生懸命で、饒舌な、このころの健さんが好きです。東映任侠オンリー即売会があるなら鶴田浩二×健さん本を出したいぐらいですね。もしくは金子信雄×加藤武本。
それはさておき、今回も石井輝男節は冴えわたっています。
鎖とヒモに繋がれた囚人。鞍馬天狗、BF団のレッドコブラ地獄大使、青大将と健さんが同居する雑居房。猟銃を撃ちながら追いかけてくる丹波哲郎など、「いしいてるおかんとくのかんがえた、かっこいいあばしりけいむしょ」が炸裂します…、
いや、
ちがう。
「いしいてるおかんとくのかんがえたあばしりけいむしょ」こそが、我々にとっての網走刑務所であって、それは現実の網走刑務所より、遥かに大きな影響力を持っているのだ!
この作品が、逆に現代日本人の網走刑務所のイメージを作ったのだ!
それだけに止まりません。田中邦衛が『北の国から』に抜擢されたのも、高倉健が『鉄道員』の主役になるのも、この作品を初めとする『網走番外地シリーズ』に彼らが出演し、北海道とイメージが強力に結びついていたからに他なりません。
そう考えると、「いしいてるおかんとくのあばしりけいむしょ」は、現代の北海道のイメージを作り上げた多くの作品の、母体とも言えます。
その証拠に網走刑務所を移築した「博物館網走刑務所」の前には、石井輝男監督の骨が分骨され、その功績を讃えているのです。