エログロ折詰弁当

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石井輝男監督謹製の、実録エログロ折詰弁当的な作品。
この作品。オープニングで自身の妻を強姦され死に至らしめられた解剖医が、妻の死の真相を探るため、過去の女犯罪史を紐解くという流れになります。が、この流れは本編とはあんまり関係ありませんし、妻の死の真相は明らかにされません。「いしいかんとくのすぴーでぃなえんしゅつ」のおかげで、そこんとこは全然気にならないんですが、ねっ!そもそも妻が強姦された被害者なのに、どうして「女性の犯罪者」をなぜ調べるんだよ!!
本編は五章構成になっております。面白いのは、この作品、章ごとに演出の仕方や取り方、目的がてんでばらばらなところ。
一章東洋閣事件編。ここでは東洋閣の女経理が、色欲と惨殺の限りを尽くして東洋閣をのっとるという、いつもの「いしいてるおかんとくのかっこいい」路線です。(なんのこっちゃ)エロスと血が山手線のごとく過密ダイヤで運行します。
二章:阿部定事件。ある意味もっともウリとなる話。なんせホンモノの阿部定が登場しているんですから。どこから連れてきたんだ!こんなことされちゃあ、いくら大島渚が『愛のコリーダ』撮ろうが、黒木瞳が『SADA』やろうが、かなうもんじゃない。阿部定のインタビューと、賀川雪絵*1演じる若きころの阿部定がオーバーラップするセミドキュメンタリー形式です。
三章:象徴事件編阿部定編のオマケ。ショートコント的な作品で、男性器が次々とカッティングされていきます。男性視聴者にとっては本編中で一番のホラー作品です。
四章:小平事件編。打って変わってモノクロのタッチで撮られた連続強殺事件のお話。モノトーンのタッチで描かれた本作は、いつもの「いしいてるおかんとくのたのしいえろすとぎゃくさつ」とは異なり、画面に沈痛さと薄暗さがみちみちています。蝉の音にオーバーラップする女の悲鳴や、夏の太陽が照りつける肌のつや、犯人のギラギラ光る目など、いつものお茶の間の皆さんが安心して見られる(?)石井輝男監督ではありません。暗いです。
五章:高橋お伝編。「いしいてるおかんとくのかんがえたかっこいいじだいげき」で、この猟奇オムニバスも幕を閉じます。暗黒舞踏土方巽が演じる首切り人やら、ケロイドゾンビの旦那やら、スパコーンと勢いよく飛ぶ女の首やら、いつものいしいてるおかんとくです、ひとあんしん。
かように、一作ごとに全然違う作風とカメラワークで撮られた本作は、石井輝男監督の懐の深さを示すとともに、ハンバーグと天麩羅とチンジャオロースとかのメインディッシュのみがむりやりに狭いお重に詰め込まれた、なんというか、「エログロ折詰弁当」的な食傷感を残します。腹もたれ、間違いなし。

*1:石井輝男エログロ路線のレギュラー。アマゾンキラーやギルマーザを演じた、東映特撮においては曽我町子の後継者、高畑淳子のアネゴ的な役割