坂東最強のイケメン・畠山重忠2 疑惑編

〈前回までのあらすじ〉
畠山重忠はロボだった。二俣川の戦いで討ち死にしたのは、耐久年数が過ぎたから。

さて、名残惜しいですが畠山重忠ロボに別れを告げ、菅谷館を回ってみましょう。

菅谷館

畠山重忠が住んでいた館。都幾川(ときがわ)と槻川(つきがわ)という二つの川の合流地点にある。総面積は13万平方メートル。中央に本郭(ほんぐるわ)があり、それを囲むように4つの郭があります。全体の形は、わかりやすく言えば逆S字形になっています。Sの下の部分の円の中に本郭が存在します。
この掘割は畠山重忠の時代のものではなく、戦国時代に大幅に改造が加えられたそうです。重忠の居館は本郭部分にあったと考えられていますが、当時の遺物はまだ出土されていません。
源義賢の墓
ここには帯刀先生義賢こと源義賢(みなもとのよしかた)の墓があります。やる夫ではSOS団の古泉が演じていました。源為義の次男です。源義朝(頼朝や義経のとーちゃん)の弟、志田三郎義広*1や鎮西八郎為朝*2新宮十郎行家*3の兄ちゃんです。
さて、「帯刀先生」。これはどう読むのでしょう?「たいとうせんせい」?
ちゃいます。「たてわきせんじょう」と読むのです。
帯刀(たてわき、たちはき)とは東宮坊(皇太子の家政機関)を警備する官人です。宮中を護衛するため太刀を帯く(はく)から帯刀なんですね。帯刀先生(たてわきもしくたちはきせんじょう)と帯刀舎人(たちはきとねり)に区分され、先生が舎人を指揮しました。帯刀先生とは、現代で言えば東宮護衛官の警視クラスといったところでしょうか。久寿二年(1155)源頼朝の兄・悪源太義平(あくげんたよしひら)によって、住んでいた大蔵館を襲われ、後見人の秩父(河越)重隆とともに殺されます。
彼の息子であった源義仲は、斉藤別当実盛によって命を助けられ、木曽へと落ち延びていきます。後の木曽義仲です。もし大蔵館襲撃事件がなければ、木曽義仲ではなく大蔵義仲になっていたかもしれないですね。まあ、そしたら朝日将軍になることもなかったかも…。
大蔵館
義賢の墓のすぐ近くある、彼の居館です。菅谷館とは都幾川をはさんで対岸の位置にあります。
もともとは上野国多胡に住んでいたのですが、秩父平氏の河越重隆の養君(やしないぎみ)として、その居館であるこの地に移り住みました。養君とは擬制的親子関係で、主に娘婿に対して使われています。秩父(河越)重隆は貴種である義賢を娘婿として抱き込み、そのバックアップを行うと同時に、一族および他の氏族に対する自己の優位を主張できたのですね。
このような養君と義父の関係はさかのぼればいくらでも例があります(摂関政治なんかもそう)。しかし河越氏はこの養君のチョイスにことごとく失敗し続けます。重隆は大蔵館襲撃事件で養君と共に討ち死に。孫の河越重頼(かわごえしげより)は源義経に娘を嫁がせて後見人となりますが、義経と頼朝の対立によって関東での立場を危うくし、頼朝に誅殺されます。秩父平氏の中でも悲運の一族ですね。
秩父平氏
秩父平氏は畠山氏の他、河越、葛西、江戸、稲毛などの諸流に分かれますが。彼らの惣領たる地位を示すのが武蔵国留守所総検校職(むさしのくにるすどころそうけんぎょうしき)という役職です。長っ!
これは武蔵国守に代わって武蔵国を総攬する役割です。当時は遙任(ようにん)といって国守が任地に下向しないことが多く、その国の管理は国の官人(在庁官人)に任されていました。それを担う秩父氏が武蔵国の顔役だったわけですね。
この武蔵国留守所総検校職は特定の一家で相伝されるものではなく、秩父平氏間で回りもちになっていました。河越氏が有することが多かったのですが、大蔵合戦や重頼の誅殺など河越氏に不幸が起こるたびに畠山氏にお鉢が回ってくるのです。いや〜ふしぎなこともあるもんですね〜。(棒読み)
で、重頼誅殺後はわれらがロボ忠が総検校職につくんです。で、北条時政や牧の方と対立して討たれます。その際、重忠の謀反を讒言したのが秩父平氏の稲毛入道重成(いなげにゅうどうしげなり)で、重忠敗死後には河越重頼の息子が総検校職に任命されてるんですよね。いや〜ふしぎなこともあるもんですね〜。(棒読み)
…腹割って話しましょう。これらの事件の多くは、秩父平氏武蔵国総検校職が絡んだ内紛が関わっているってことなんでさぁ。河越、畠山二氏は総検校職の帰趨を巡って、常にお互いの瑕疵に付け入ろうと牙を磨いていたことになります。う〜ん、河越重頼の失脚を好機として、総検校職を得たとしたらクリーン重忠の印象ががらりと変わってしまうなぁ。「イケメン」でも「イケロボ」でもなくなちゃうなぁ。




その刹那であった。

ムィーン、ガション。ピピリピリ。ミーン、ガショガショ。メチャン。
キュィンキュィンキュィンキュィンキュィン。

謎の音がmantrapriの背後に迫る。と共に、エネルギーチャージの電子音が響き渡った!


…いやぁ、
やっぱり、
畠山庄司次郎重忠殿は、
清廉
潔白
忠烈なる、
埼玉の英雄で
ありますよ。
ははははははははっはあhっははっはははっははあああああああああ、ユルシテ。

*1:義賢の同母弟。野木宮合戦の首謀者

*2:河内源氏、あるいは日本最強のアーチャー

*3:源平合戦トリックスター