坂東最強のイケメン・畠山重忠

いよいよ来ましたよ。運命のときが。
やる夫は鎌倉幕府を成立させるようです 巻三十三
怒涛の欝展開が続く「やる夫が鎌倉幕府を成立させるようです」*1ですが、いよいよ次回は埼玉県の英雄・畠山重忠(はたけやましげただ)の最後が描かれます。そこで畠山重忠討滅の前に彼の本拠地である埼玉県武蔵嵐山の菅谷館(すがややかた)と、併設する嵐山史跡の博物館で開催されている「畠山重忠とその時代展」へと足を運びました。

畠山重忠とは
(生没年1164〜1205)
平安末から鎌倉初頭の人物。平良文(たいらのよしふみ)を祖とする坂東八平氏秩父党に属する。源平合戦の当初は源頼朝に敵対し、三浦氏の本拠地・衣笠城を攻めるが、後に帰順。源平合戦で多くの武功を立て、奥州藤原氏との戦いである奥州合戦では先陣を勤める。頼朝の死後は秩父平氏の惣領、および幕府の実力者としての地位を保つが、元久2年(1205)に北条時政とその後妻・牧の方に敵対し、二俣川の戦いで一族もろとも誅滅される。

先祖である平良文に関しては、以前に梅しばの話で触れました。
梅しばの話 - マントラプリの生涯原液35度
畠山氏が派生した秩父氏をはじめ、上総、千葉、三浦など鎌倉時代の代表的な坂東武者は多くが「梅しば」の子孫になります。この畠山重忠ですが、軍記や史書ではとかくイケメンに描かれています。曰く一の谷の合戦では馬を担いで鵯越(ひよどりごえ)をしただの、彼の目の前に行くと誰もが緊張しただの、潔白をハンガーストライキで訴えただの、あまりのイケメンぶりに頼朝がしっとしただの、文武イケメンの三冠を達成し、なおかつ誰も悪く言う人がいないという、なかなかにめずらしい人物です。竹宮恵子先生の漫画ではビジュアル的にもキッチリとイケメンに描かれておりますよ。

吾妻鏡(上)―マンガ日本の古典〈14〉 (中公文庫)

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これほどイケメンの畠山重忠オンリーイベントじゃなかった、展覧会が開かれる!しかも彼の住居のある菅谷館で!私の足も速くなるものです。「いざ鎌倉」ではなく、「いざイケメン」と会場に駆け込んだ私の目前に現れたのは…、

畠山重忠ロボでした。

ムィーン、ガッションガッション(機械音)
「ヨウコソミナサン」
「ワタシガアルジノハタケヤマショウジジロウシゲタダダ」
ムイーン、ガッションガッヨン(機械音)
ギギーン(首が上下に動く音)
「ココハワタシガクラシテイタスガヤヤカタダ」
モィーン(両手が動く音)ムィーン
ガションガション

↑〈資料館パンフレットより抜粋〉


…なんじゃ、これぁ。
私を出迎えたのは電動式のロボでした。享年は42歳の壮年だというのに白髪が多く、しわフェイス、おまけに電動音まじりでガチャガチャ動く。こんなのイケメンじゃない、畠山重忠じゃない。さらに言えば人間ですら、ないっ!
失望のあまり資料館を去ろうとした私に、ある直感が生まれました。「逆に考えるんだ」と。その直感は語りかけます。風が語りかけます。*2そう、今までの畠山重忠の事跡を辿ると…、

  • 馬を担いで鵯越(ひよどりごえ)→ロボだから力がある
  • 奥州合戦で先陣→ロボだから矢面に立たせても死なない
  • 彼の目の前に行くと誰もが緊張した→ロボだからビビる
  • 潔白をハンガーストライキで訴えた→ロボだから動物性たんぱく質がいらない
  • あまりのイケメンぶりに頼朝がしっとした→機械の体がうらやましい

これらの事跡は、帰納法的に一つの事柄を指し示します。
結論:畠山重忠は最初からロボ。

*1:「やる夫歴史」と呼ばれるAAキャラクターやる夫を使ったビジュアルノベルシリーズ。本作は足利義兼と義氏の親子を主人公に、鎌倉幕府成立の過程を描く

*2:十万石饅頭