プリキュアだって悩んでる!?〜ハートキャッチプリキュアのストーリー構造〜

〈ストーリーダイジェスト〉
新たな大幹部・クモジャキーの登場に闘志を燃やすキュアマリンことファッショ部頭領(ドージェ)・来海えりか。だが、キュアブロッサムはその苛烈なファッショファイトに引いていた。「自分はこのファッショ野郎のパートナーにふさわしくないのでは?それどころか役立たずとして粛清されるのではガクガクブルブル」とおびえ、えりかを避けるようになる。
新たなデザトリアンの登場にも尻込みするつぼみ。戦いもうまくいかない。「うぬ、何を考えておるっ!」とのえりかの問責に、「役立たずだから捨てられる」と答える。そんなつぼみを一笑に付す頭領。
「愚か。ワシがうぬをパートナーにしたのは親衛部隊・赤シャツ隊を結成するため、うぬのカラーリングが適しているからである。戦力としては、当初(ハナ)っからアテにしておらぬわっ!」
そんなえりかの割り切りのよさにハートキャッチされたつぼみは、キュアマリンに永久の忠誠を誓うのであった。ここにファッショ的武闘集団プリキュアは完成したのである。

もう、もうマックスですわ。ハートキャッチプリキュア!今週は心臓どころか静脈、動脈までも根こそぎハートキャッチされ、体中から抜き取られたような気分ですよ、たまらん!
で、4話まで見て、本作品のフォーマットと展開、および主人公二人の役割がおぼろげながらわかってきましたよ。本作品の毎回のストーリーラインはこのようになります。(たぶん)

  1. つぼみ(ないしはえりか)が軽い悩みを抱えている
  2. その悩みを投影、拡大したかのようなクラスメートが登場する
  3. えりかが無神経に悩みを抉る(えぐる)。クラスメートとつぼみが傷つく
  4. つぼみとえりかをサポートキャラ(おばあちゃん、もも姉等)がフォローする
  5. クラスメートがデザトリアンにされる
  6. クラスメートの「悩み」をけなす砂漠の使徒の幹部をつぼみが一括する
  7. 悩みを振り切ったつぼみ(ないしはえりか)がデザトリアンを調伏する
  8. えりかがたまらんフォローを入れる
  9. 事件解決

ここでポイントとなるのはプリキュアだって悩んでる」ということです。クラスメートたちの悩みがデザトリアンという怪物を生み出す。これが毎回のフォーマットです。しかし、それを調伏するプリキュアたちも、悩みから切り離された存在ではありません。彼らも常に悩んでいる。
つぼみはその内気で、引っ込み思案の性格から、えりかはその天真爛漫、傍若無人の行動から、種類の違う悩みを生じさせます。
1、2話ではえりか自身が悩みを抱えデザトリアン化します。3話では部活とプリキュアの勧誘でえりかとつぼみが悩みを抱え、4話では戦力不足でつぼみが悩みかかえる。デザトリアン化するクラスメートと同様の悩みを、プリキュアたちも抱えているのです。彼らがプリキュアとして協力していくことでその悩みは解消され、彼ら自身も浄化される。人の悩みを通して自分の悩みを客観化し、プリキュアという武力で「カタチ」となった悩みを解決し、心の種という浄化された「カタチ」にする。
一人では解決できない悩みも、その悩みによってもっと苦しんでいる「他者」がいるから認識できる。かつ、その悩みと正面きって戦うときも隣に「パートナー」がいるから直視できる。

わたしはブロッサムがすき!!
頭がよくていろいろなところに気がつけるなんてすてきだよ!
きっとわたしたちはお互いの力が必要なんだよ。
わたしたちは二人でプリキュアだよ!
                                  キュアマリン

プリキュアだって万能じゃない。いつも悩み、苦しんでいる。でも二人で戦うことで、お互いに「気づき」「近づく」ことができる。「ハートキャッチプリキュア!」は二人のプリキュアの関係性とそれによって生じる悩みを中心に描いた、「関係性の作品」ということもできるでしょう。たまらん。来週もモニターの前で結跏趺坐(けっかふざ)です!!