2011-03-23

08:08
都道府県名で旧国名よりふさわしいと思えるのって、秋田県ぐらいしかないなぁ…。

08:22
古代では秋田城が元慶の乱の最前線だし、中世では秋田城介の城(安達)泰盛さんのお陰で有名だったり、戦国大名秋田氏がいたり、近世でも佐竹が城下町としたりと、山形と複合される出羽よりも独自性があるし、歴史的な系譜もある。

08:31
何より官職名になってる県名って、他にないんだよなぁ。令外官(りょうげのかん:律令の規定外の官職)だけど。

10:56
ああ、土手に菜の花が咲いている。イヤだ。自然はあれだけのことをしながら、私たちの心を置いて平常運行している。イヤだ。西洋人が自然を調伏しにかかった気持ちが少しだけ分かった。

11:05
自然に「こころ」はない。象の鼻が伸びた如く、キリンの首が伸びた如く、「こころ」は人間が適応のために発達させたローカルルールにすぎないからだ。広くは自然の一部ではあるが、そんな特殊性にかまってくれるほど自然は暇ではない。自然に「こころ」はない。

11:11
伊集院光が草野球をやってる荒川のグラウンドなう。今日はやってないみたい。

12:08
こんなときでも池袋演芸場に向かっている自分がいる。

13:25
池袋の三月下席は新作台本まつり。新作落語の雄たちが群雄割拠です。毎日トリが替わり、本日は三遊亭円丈師匠の「聖なる我家」。

13:41
SWAからも三遊亭白鳥林家彦いちの二人が出ます。今日は出ませんが来週月曜日は喬太郎がトリです。

17:47
新作台本まつり終了。前回浅草で見たときにはドラクエネタを話していた三遊亭円丈だったが、今回はファイナルファンタジーネタを振ってきた。66歳、若いなぁ…。

17:55
私の中での三遊亭円丈は落語家というよりも仏像彫刻史の伊東史郎と並ぶ狛犬研究者なのだが…。あんなはっちゃけた人だとは思わなかった。

18:08
今回新作落語を延々と聞き続けた結果、古典落語と比較しての「弱み」が分かった。それはオチの不安定感。古典落語のオチは現代では意味が通じなくなっているものもあるが、何千、何万の演者、視聴者の目をくぐり抜けたことで、噺全体がオチを支える体制ができている。

18:14
一方の新作、三遊亭白鳥さんの創作はオチがうまいなぁと思うんだけど、それでもオチの浮遊感がある。現代人の方が全体とオチの整合性を考えているとは思うんだけど、なんというか、噺のノリや背景との違和感が強い。

21:50
今日は黒澤明監督の誕生日だったんですな。生誕101周年ということで。一番好きな黒澤映画は「天国と地獄」ですね。多視点での犯罪捜査、ノンストップで動く舞台、犯人の動機の抽象性など、以後のサスペンスものに与えた影響は大きなものがあります。

21:55
黒澤の犯罪追跡ドラマとして「野良犬」、「悪いやつほどよく眠る」の系譜に属する本作は2作品の要素を取り入れながら、主役や視点が複雑に入れ替わり、交錯し、群像劇となっているのも興味深い点です。複数の眼がタペストリーのように物語を織りなしています。

21:59
複数の視点という点では代表作「七人の侍」もそうなのですが、本作がおもしろいのはその複数のなかに犯人である竹内銀次郎(山崎努)の視点も入っていること。黒澤が制作中、「犯人に同情的にならないよう気をつけた」と述べているのは、犯人の視点を作中に多く介在させているからなんでしょうね。

22:03
で、ここでふと思ったのはジョジョの奇妙な冒険の第四部で荒木先生が敵である吉良吉影に「同情的になってしまった」と述べていることとの類似性です。

22:09
ジョジョ第四部も「天国と地獄」のように多視点が介在するドラマです。物語は主人公の視点を離れることが多く、作品の舞台・杜王町に住むあらゆる人に視点が移り、展開します。その中には当然吉良吉影の視点も大いに含まれるわけで。

22:12
両作品とも、視点が複数に分割されることで、物語を支配する特定の「視点」といったものが限りなく薄くなっている。そのためそこに登場する視点は相対的な価値を持つように視聴者や読者には判断される。その結果、卑劣な犯罪者の視点ですら相対的なものとして「受け入れてしまいそう」になる。

22:15
なので作者は犯罪者に読者がシンパシーを抱いてしまわぬように、細心の注意を払って物語を叙述しなければならない。黒澤、荒木両氏が語る「同情的にならないように」という言葉の真意はこんなところではないでしょうか?

22:17
ああ、今ようやくこの二作品を私が好きな理由が分かった。群像劇で、かつ犯罪者の視点を大事にしている物語だからなんだ。

22:21
あ、最後に一言。黒澤明作品を貫くテーマは「人間愛」だとか「リアリズム」だとか言う声がありますが、私は「寝取られる男」が黒澤の大きなテーマだと思っています。

22:36
その寝取られ男を「七人の侍」、「用心棒」と一貫して演じているのが土屋嘉男(つちやよしお)です。そんなもんで「赤ひげ」で寝取られ男を演じた加山雄三を慰め、ハッピーエンドをともに迎える土屋嘉男を見て、黒澤寝取られサーガがハッピーエンドを迎えることができたと私は思うのです。

23:41
@LDmanken 本当はあのシーンの後に三船と仲代の会話が入る予定だったのですが、カットしてあそこで終わりにしたそうです。山崎努の演技が良かった点もあると思いますが、シンパシーの忌避も理由として大きいでしょうね。ライトのあがきかた、確かにそっくりです。


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