前回のマザコンの話の続きです。
子供が母親との関係で怪物となってしまう。としましたが、その理由はこうです。ホラーに出てくるマザコンは大概が子供に対して強い拘束を迫る母親です。彼女にとって子供とは自分の体内から生まれた分身であって、他人とは認識されないのです。しかし、子供にとってその環境はどうでしょう。母親との一体感を強要され、それが常態化するに従ってもはや母親との繋がりなしには日常を維持できなくなります。つまりは母親の胎内にいる状態と変わりがなくなってしまうのです。そうはいうものの彼(彼女)は身体的には一個の人間で、当然ほかの人間とのかかわりを日常生活で必要とします。しかし、意識的には母親と一体化してしまっている彼らは他人から見れば恐ろしくいびつな姿に見えてしまうのです。これがいわゆる“怪物”と呼ばれるものの正体だと私は考えます。
ギリシャ神話に出てくる怪物たちも、母親との一体化から逃れられないいびつな姿の表れだったのかもしれません。ここから逃れることでゼウスを中心としたオリンポスの男神は初めて神殿での主神の地位を獲得して言ったのだと考えます。つまりは母親殺しです。ホラーの場合はこれとは逆の反創造であり、母親という自分を守り、かつ拘束する支配者から逃れるため、自分の内に自分が母親のような強権者となって支配できる対象を求めるようになります。それが架空の世界であり、ホラーやモンスターの巣窟となるのではないでしょうか。
ザコンとは文字通りすべてのホラーの母といえましょう。