僕たち、まけるもんかっ!!(ガス人間第一号ヨリ)
今日は私の好きな俳優の書いた本を紹介します。
- 作者: 土屋嘉男
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2002/03
- メディア: 文庫
- クリック: 1回
- この商品を含むブログ (7件) を見る
中でも僕が好きなのは黒澤明と本多猪四郎*3、土屋嘉男の三人の触れ合いの描写です。黒澤明と本多猪四郎は山本嘉次郎の門下で兄弟弟子なのですが、二人とも世界に通用する作品を生み出し、発信し続けました。なにより二人の共通して起用した役者が土屋嘉男なのです。*4その三人が一同に介し、談笑している。この壮絶なシーンを想起するだけで私はブルブルしてしまいます。
そして土屋氏の感性がまたいい。夢と現実を自由に行ったり来たりできる感性を持ちながら、なお地に足がついた“食”というものにこだわり続ける。その質実剛健たる自由さが黒澤明の感性と触れ合い、はぜる。二人の日常会話は穏やかで愉快でありながら、現実を軽く凌駕するスケールを持ちます。これは黒澤映画の解説書としてみるよりは、土屋嘉男と黒澤明という二つの個性が交じり合った化学反応の著作というべきでしょう。それでいて、いやそれだからこそ他のどんな黒澤明の評伝よりもスリリング。