夏が哭いている

夏が哭いている。放埒な季節が声を上げて哭いている。悲しいから泣くのではない。遊び疲れて、途方に暮れて、なんとなく訳もなく哭くのだ。涙は風を呼び、天と地のあいだ。我々の宙ぶらりんな世界を渡る。それは別れではない。彼のきまぐれだ。ふと夏が哭いたからといって、我々まで膝付き合わせ、哭く必要なんかないんだ。黙って屋根をさがせばい。、彼がかんかんの、上機嫌の時と同じように。もし哭いてしまったのなら、それはきっと夏でなく、己のかなしみに惹かれたのだ。夏は人に合わせて哭きはしない。そんな気の効くやつじゃない。いやそれゆえに、だからこそ、彼の涙に流されて、無為の涙を流してしまう。