4.シメる女
さて、この不朽の名作「嘆きの天使」ローラ。これのパロディで女装した男がローラの格好をして踊るのがルキノ・ヴィスコンティ*1監督の「地獄に堕ちた勇者ども」です。それをさらに朴(パク)*2って「ローラ、ローラ」歌ってた西城秀樹を主題歌に起用し、主人公に女装させローラ・ローラという名前をつけたのが富野御大のターンAガンダム。ねじくれてるなぁ。
さて、女装したロラン・セアック君は大変純情でしたが、生粋の女性となると一癖も二癖もある奇人、変人ぞろいです。女性に対する監督の負の念波を感じます。特に多いタイプがタイトルにもした「シメる女」です。彼女たちは大変凶暴です。主人公をけなし、引きずり、困惑させた挙句あぼーん。まあ、例を挙げますと

海のトリトン ピピ・・・全裸の人魚。健気な主人公トリトンをへタレ扱いして詰り倒します。トリトンを陥れるための自分の計略で、仲間が全滅したにもかかわらず反省の態度が一遍も見られません。それどころかトリトンに責任転嫁する有様です。恐るべき幼女。

伝説巨神イデオン イムホフ・カーシャ・・・ロシア系の宇宙移民。アフロの主人公に対していつもカリカリと当たります。あと異星人の姫様をことあるごとにリンチしたり、独房に入れたり、射殺しようとします。その姫様に助けられても反省するどころか「あの女に借りをつくってしまったのよぉ」と叫んで号泣します。

機動戦士Zガンダム ベルトーチカ・イルマ・・・アムロの彼女。「もっとアムロを使いやがれ!!」と理不尽な彼女面と要求を公の組織で繰り返し、穏健派のミライさんに窘められ、カルシウムが足りないカミーユにすら引かれます。また、自分の要求だけはさかんにするクセに人の話は穿った見方をするか、聞こうとしません。

逆襲のシャア クエス・パラヤ・・・インドで修行したくせに全然精神修養ができていません。シャアやアムロに色目を使いつつ、ハサウェイにもツバをつけます。そのクセ他の女性が少しでも自分のマーキングをした男に近づくと「てめーはオールドタイプなんだから近づくな」的なことを言います。恐るべき独占欲と、選民主義です。

機動戦士Vガンダム カテジナ・ルース・・・キ○ガイ筆頭。清純なお嬢様がどんどん恐るべき頭角を現し、自分を慕う13歳の少年を殺しにかかります。またヘタレ男を彼氏にしてしまった後悔と怨念とあとはオーラぢからが混声合唱となり戦場で虐殺を繰り返します。マリア主義というヘロヘロな新興宗教大義名分としてそれを行っているのですが、本人はあまり信じていないみたいです。兎に角「自分の据わりの悪さを虐殺に転化させる恐るべき女」であることは間違いありません。

かような狂い気味の女性たちに共通するのは「己の責任を直視しようとせず、あまつさえ他者への攻撃に転化する」ということです。この過剰防衛の生む攻撃性は永遠の悪循環につながり、周りの男を引かせ続けます。それがよいパワーとして発揮されているときはイニシアチブのとれる女性と評価されるのでしょうが、富野作品の場合はかように負の面ばかりがオーラとなって噴出し、他者に迷惑をかけ続けるのです。それでも彼女たちはシメるのをやめられません。これは治る、治らないの問題でなく、彼女たちのレゾンデートル*3にも及ぶものだからです。だから、こういう女性たちが無意識のうちにふっと見せてしまう疲れや自己嫌悪。イデオンでのカーシャの「私たち、これからはなかよくしようね」という死の間際の台詞が健全に生きている女性のそれより、切なさを感じさせるのです。多分これは監督の昔の彼女・チョキの人格が反映しているのでしょうね。そこらへんのことは

を参照してください。

*1:映画監督。イル・モーローの前のミラノ領主・ヴィスコンティ家の子孫だと、思う。塩野七生の友達

*2:誤記ではない

*3:存在理由