私が愛したウルトラセブン3

一位 円盤が来た(45話)
「「狼が来たぁ!!」幾度も言っているうちに誰も振り向きもしなくなる。本当の狼は、その隙にやってくる!」
童話を逆手に取ったペロリンガ星人の侵略。狼少年は最後に本当のことを言ったが、誰にも信じてもらえなかった。それを逆手に取り、円盤を星に見せかけて地球へ近づく。それに気づいた青年・フクシン。彼は最初から真実を言っているのに、宇宙人の巧みなカムフラージュによって嘘にされてしまう。そしてしまいには嘘つき扱いされてしまう。「人間なんてそんな動物さ」ペロリンガ星人はかたる。
フクシン青年は集団就職で都会に来た労働者。夜中まで星を見て、昼は寝不足でフラフラしている。人間嫌いの彼は星だけが友達。一人だけの楽しみ。そんな彼の望遠鏡に入り込んだ円盤群。ペロリンガ星人は彼を信じない地球を、地球人を見限るよう説く。「さあ、約束どおり。君を星の世界につれていってあげよう。われわれはもう何人もの地球人を星へつれていってあげたんだ」まどろむフクシン青年。
結局セブンによって宇宙人は倒され、住民の前でウルトラ警備隊報償されるフクシン。しかし、彼は星を見続ける、寝不足で今日も自転車をこぐ、星の世界を夢に見ながら。人間世界で彼が安らぐことはないのだ。
フルートとピアノのための協奏曲やsiesteなどの冬木透室内音楽を中心に物語はすすむ。フクシン青年とペロリンガ星人との対話に乗りながら、ゆるやかにすすむ物語と音楽。
実相寺監督の最高作品だと私は思う。あと上原正三に注目したのも小学生の時にこれを見たから。上原正三集団就職ものは後番組・怪奇大作戦の「かまいたち」によって最悪の結末をむかえることになる。そちらも併せて見ていただくと感慨ひとしおであろう。十五年間変わらぬ私が愛したウルトラセブン、オールタイムベスト。(脚本川崎高・上原正三