移動の習俗

昨日は友人の引越しを手伝いに行きました。こうやって引越しスキルを積み、いずれは引越し大元帥になるつもりです。なったってこれといったいいことはないけどね。
荷物を箱の中に入れて、すっからかんになった部屋を見るとしばし寂寥感(せきりょうかん)に襲われます。さびしいものです。数時間前までは自分の巣であり、マーキングを施してきたはずの空間が自分とは無関係のものになる。犬みたいにマーキングによる領土伸張を盛んに狙う畜生にはなかなか絶えられぬことなのではないでしょうか。すべてをゼロにし、居を換え、心を換え、新たな縄張りを構築していかなければならない。これら骨の折れる行為なすバガボンドやハーミット*1やらは、一所に留まる事の数倍の労力と決意を必要とする人間たちだったのではないでしょうか。・・・最初のうちは。
まあ、「慣れ」てしまえばそれが日常と化すため、何ということはなくなっていったと思います。人間は自身の経験の積み重ねたる「慣れ」によって、本能を麻痺させることのできる類稀なる動物だと思う次第です。

*1:隠者