甦ってほしくない勤労

tukinohaくんや宇多源氏くん、紀ノ国くんらと、ラストサムライ渡辺謙トム・クルーズが忍者軍団と戦っているのを尻目に、松田優作兄さん*1の大活躍を見ました。

陽気なストーリーダイジェスト
ニューヨークのやさぐれ刑事・ニックは優作兄ぃによる殺人現場を偶然目撃してしまう。彼は死闘の末、優作を逮捕するのだが、身柄を日本へ引き渡さなければならなくなったんだ。そこでホモっぽい相棒と一緒に日本に渡るのだが、ニックのミスで優作兄ィは逃亡してしまった。
怒り心頭のニックに日本警察の不器用な男こと高倉健が力を貸す。「不器用ですから・・・」と組織の殻を出ようとしない健さんとイケイケやさぐれヤンキーのニックは当初対立していたが、相棒の死をきっかけに友情が芽生える。邪悪な優作兄ぃを倒すため、一路オヤブン基地へ乗り込む!!

・・・はい。全然ストーリー紹介になってませんね。まあ、こんな感じで勘弁してください。で、面白かったポイントですが、

①優作兄ィのホラー映画
本作は松田優作の遺作です。自分の死を予見していたであろう兄ィはこの作品にすべてを賭けています。その結果演技はいずれも鬼気迫るものとなり、さながら松田優作ホラー映画の様相を呈しています。兄ィが老人の喉笛を掻っ切る初登場シーンから、黒グラサンの兄ィが出てくるたびに見ている我々の背筋に戦慄が走ります。冗談ではなく、いつでも人を殺しそうな凶器が悪意がプンプン漂っているのです。まさに生きる幽鬼。しかもオチャメなので余計始末に終えません。

②アレな日本
この作品は多くの場面が大阪でロケされていますが、少しおかしな大阪です。ブレードランナー大阪とでも言うべきでしょうか。道頓堀の電飾に何故か過剰な煙、立ち食いうどん屋。おまけに襲い来る殺人レプリカント松田優作。日本だけど日本じゃない!?おまけに溶鉱炉での戦闘シーンではデコトラと自転車が工場内を行ったり来たりしています。中国かよ!!カメラワーク一つで大阪がここまで異世界になるとは思っても見ませんでした。

③・・・夢オチでは?
前述の溶鉱炉での対決の不始末のため、本国に強制送還となったニック。優作兄ィに首チョンパされた友人の死体とともに、泣く泣くデトロイト行きの飛行機に搭乗します。しかし飛行機内から脱走。高倉健を「穴から出て来い!!」「お前はできる子だ!!」と炊きつけて、松田優作がいるヤクザのオヤブンの別邸へと向かいます。燃える展開です。しかし別邸ことオヤブン基地が出て来た時、我々はアングリしました。
幾重にもなったブドウの大農園の上に巨大な鳥居が鎮座しています。そこから丘を二つぐらい越えると
かやぶき屋根の巨大掘っ立て小屋が八角円形の廓を四方に張り巡らして鎮座しています。周囲のブドウ畑にはベトナム風の農夫がウロウロしています。おまけ程度に竹が数本ニョキニョキ植わっています。これがオヤブン基地(勝手に命名)です。

 
つーか、待て。日本じゃねぇ!!大阪から車で数十分の場所にこんな魔界があろうとは、近畿在住の私でも知りませんでした。つーか誰もしらねぇ!!
この神秘空間・オヤブン基地の中では、高倉健は今までの「不器用」さを打ち破り、マシンガンを乱射し出します。一通りヤクザを虐殺した後、ニックに向けて微笑みながら「オレは穴を抜けだした!!」と言う姿は優作兄ィとは別の意味でホラーです。もちろんアメリカンなニックは最初から撃ちまくりです。そしてブドウ畑のカーチェイスの末たどり着いた、鳥居と注連縄がごろごろ転がっている怪奇霊場で兄ィを逮捕。二人は表彰され、ハッピーエンドとなるのでした。




・・・今でも私は信じています。非公開のディレクターズカット版ではあの後
「終点〜、デトロイト〜。デトロイト〜。」
「は!!夢か」
というシーンが追加されていることを。

*1:狂気の俳優。あらゆる攻撃に対する耐性を持つ犯罪者を演ずることがい多いが、唯一・ドテっパラへのナイフの一撃にだけは弱く。過去何度もこの手で退治されている