カオス魔窟クロニクル
私の部屋はカオス魔窟と呼ばれるほどの惨状になっています。私は整理整頓が下手なミスターゴミ屋敷です。しかし、そんなわたしでも一念発起して部屋を片付けるときがあります。
だいたい、部屋の状態には周期が存在していて、
①入居期(当然きれい)→②安定期(使った史料や本を投げっぱなしにする。汚い)→③不安定期(何をするでもなく、ただ部屋が汚れていく。悪循環)→④改革期(不安定期が煮詰まると発生する。恐るべき早さで片付ける)→⑤持続期(床が徐々に侵食されていくがまだ綺麗に保とうとしている)→②に戻る。以降無限ループする。ただし
→⑥退去期(当然きれい)という結末は用意されています。
この周期を見ていて思ったのですが、これは国家の「勃興」というものにも当てはまる、普遍的な原理なのではないでしょうか?概して唐の太宗・李世民*1が言うように「創業は易く、守成は難き」ものなのです。①入居期は即ち政権を獲得した時期です。これをもって国の建国とします。②安定期は精神的に落ち付いてはいるものの、内情は徐々に腐敗していくのがこの時期です。漢の高祖*2が項羽*3を倒して漢王朝を打ちたてた後、匈奴*4や鯨布*5等の不安要因が残っていたにもかかわらず、ヘロヘロ状態になったのと同じようなもんです。③不安定期は腐敗要素が表に浮上し、国が危機に陥る時期です。漢朝に准えれば皇后の呂氏一族による専制や匈奴の侵入が挙げられるでしょう。で、これら守勢状態で起きた問題を改革する必要に迫られたときが④改革期です。この時期に武帝*6が登場し、儒教を国教化し、匈奴に対して果敢な対策を行います。で、苛烈かつ抜本的な改革が成功した後は⑤持続期に入り、宣帝*7による安定した治世を迎えます。
以後、この流れを漢朝は繰り返しますが、⑥退去期に入り、自分以外の他者の為に王朝(部屋)を明け渡さなければならなくなります。これが王莽*8による漢の簒奪です。この空き部屋に後に光武帝*9が入り、漢朝の継続としての後漢を名乗ります。しかし家主が変われば部屋も変わる。元の漢朝ではもはやないのです。一人の人間が住まいを安定した状況に保ち続ける事の難しさ。しかもその汚れの責任が全て自分に帰される。これが「守成が難い」理由です。
かようなクロニクルが今日も我が部屋で繰り広げられており、それと同じサイクルは私の部屋を飛び越えた世界中で普遍的に行われているのです。