「根っこが張っているのに、不思議と飛べるきがしている」
そういってこの部屋を出ていったあなた。おいらはぽつねんとたたずむのさ。
誰もいない308号、2年契約のあなぐら。
あなたさいごまで責めなかったね。だからいまだに別れがわからない。
さいごの言葉もなんていうか、意味不明。困るよ、こういうの。


ここはもともとおいらの巣。あなたはあとからのお客さん。でもね、
あなた乗っ取ったんだ。いつのまにかに、おいらと、この巣。
だからひとりにこの部屋は、なんだか他人行儀なのさ。
おいらが主人だったのに、ね、変な話だ、ね。



だからこの部屋をでるんだ。あなたのものでなくなれば、おいらのものでもなくなった。
「あたらしい住人に、この巣はおいらたちのことを喋りゃしないだろうか」
そんな後ろめたさだけ残してね、鍵。しめたよ。