「まなび時空」に引きずり込め!!

昔好きだった「雫−しずく−」のノベライズ版が金月龍之介氏によって書かれていたことを、前回の記事を書くにあたって知ったので、今週は金月龍之介週間としたいと思います。

今から二十八年後の未来、かつて義務教育だった学校は生き方の多様化による生徒数の激減をまねいていた。生徒も教師も退屈な日々を過ごしていた。聖桜学園もそのような学校の中の一つだったが、一人の生徒の登場によってその姿は変わろうとしていた。天宮学美(あまみやまなび)。転校早々、生徒会長に立候補した彼女によって学園は変わろうとしている。

まあ、こんなのが「がくえんゆーとぴあ まなびストレート!」」のストーリー内容です。このアニメ、タイトルどおりに非常に「ストレート」です。主人公の学美はあらゆる困難にぶつかっても常に前向き。ズンズンと前に押し通って行きます。そんな彼女に感化された生徒会書記・稲森光香(いなもりみか)や衛藤芽生(えとうめい)をはじめ、四人の仲間が集う、というのが今までのお話です。でで、この話を見ていて注目したことは二つ。
①「まなび時空」の発生
②まなびは中心であって中心ではない
これらについて述べたいと思います。


①「まなび時空」の発生
まず①ですが、この作品は見ているとこちらが気恥ずかしくなってしまうシーンが何度も見受けられます。私は便宜上それを「まなび時空」と呼んでいます。以下にサンプルを列挙。
第一話:まなびが校歌を歌うと共に周囲が桜の園に包まれる。
第二話:全学園に電波ジャックしてアジテート。
第三話:周囲をホワイトアウトさせて天使に変化。板野サーカスの如く虹色を乱舞させ、花火にして打ち上げる。(コレが一番凄い)
第四話:パソコンから光を照射して、衛藤芽生を幽体離脱させる。
第五話:ここでは「まなび時空」発動せず。
第六話:ここでも「まなび時空」発動せず、理由は後述。
第七話:大気と時空の流れをコントロール。瞬間の世界へと誘う。
第八話:乗っ取りをかける理事長の前でシャウト、時間を進ませる。
かような「まなび時空」。この時空はまなびのみが現出させることのできる世界で、他のキャラがそれに巻き込まれるのも彼女を触媒としての場合に限られます。きっとこの時空の中では、

説明しよう。「まなび時空」の中はまなびによるまなびのストレートな世界であり、この中で天宮学美は通常の四倍の力を発揮するのだ!!(cv政宗一成)*1

ってなことになってるに違いありません。恐るべし、まなびストレート
で、このあまりにもストレートな表現方法ですが、よく見ると五話と六話には使われていないのです。ここがまなびストレートという作品がストレートに行かないところ。そのことについては②で話します。


②まなびは中心であって中心ではない
これほど強大な力を持つまなびでありますが、実は彼女はこの作品の中心ではないと私は考えています。まだシリーズが完結していないので推測の域を出ないのですが、この「まなびストレート」の真の中心は稲森光香なのではないでしょうか。そう、彼女が主役を務める五話、六話では「まなび時空」が発動していないのです。
この二話は稲森光香(通称みかん)と仲間たちの絆を描いた話であり、そこにはただゆっくりと流れる時間があるだけで、「まなび時空」は姿を見せません。あまりにもあからさま過ぎて引いてしまう人もいるであろう「まなび時空」の発動は製作者側からすればケレン味ではなく、怜悧な計算によってなされたものではないでしょうか。そうでなければ二話という多くの時間を使って脇役である稲森光香に焦点を当て、意識的に「まなび時空」を省く意味が分かりません。
私はこの話を平凡な少女・稲森光香が天宮学美の超常的なカリスマの薫陶を受けつつ、己の道を模索していく話ではないかと考えます。おそらくまなびは最終回かその前後に転校するのでしょう。(推測)その後、稲森光香がまなびの様な「まなび時空」の使用者へとスキルアップするのか?平凡なまま、己の生き方を貫くことで、「まなび時空」を越えていくのか?八話での光香の
「私は、私にできることをやるしかないよね」
というセリフは彼女のこれからの方向をあらわしたものだと考えます。まなびストレート。新たなる「まなび時空」と共に、光香の動向にも目が離せませんね。

追申

http://blog.livedoor.jp/dqnplus/archives/926068.html
とのことです。あのオープニング、ホラーっぽい雰囲気でよかったのになぁ・・・。あれ、あんまりかわってないね。ならよろし。ユーフォーテーブルは静謐な空気や、薄ら暗い情景を描くのが上手いから、ホラーアニメもバリバリ行ける気がします。次はそっち方面の作品も見たいです。

*1:元ネタ:宇宙刑事シリーズ