どこへ行く!金月龍之介

ということでこのコーナーも今日で終わり。明日からはフツウノオンナノコに戻ります。

がくえんゆーとぴあ まなびストレート!」第九話。「まなび時空」は今回も発生しません。そして今回は「種まき」です。主役は・・・たぶんももちゃんこと、小鳥桃葉。
小鳥桃葉はいつでも一歩引いた視点でまなびたちを観察していました。カメラ片手に。稲森光香のようにシャイだからでも、衛藤芽生のようにテレ屋だからでも、上原むつきのように部活に力を出しているからでもありません。この距離が彼女にとって最も気持ちがいいから場所だからです。この作品のいいところは友情の押し付け合いではなく、お互いがお互いの距離を理解している。そんなところにもあるのだと思います。だから夏休みの忙しいさなかに桃葉がハワイ旅行に行っても誰も彼女を責めませんでした。(無視はしたけどサ)
しかし、距離を理解するということは当然離れていく相手に対しても強く出ることができないのです。学園祭の票が集まらないことから芽生とむつきは生徒会を離れていきそうになりました。同時に生徒会から離れていく生徒たち。これらの人たちの「距離」を理解しているまなびや光香には止めるすべはありません。しかし、そこで只一人・ももちゃんが立ち上がったのです。
彼女は放送室をジャック。自分が過去に撮った仲間たちの映像を学園中に流したのです。彼女は誰よりも「距離」を保ちながら、同時に誰よりもその「間」を大切に思っていたと私は考えます。人と人との「間」を知っている人間は、誰よりもその「間」を意識し、愛するものです。ももちゃんはそれを知っていたのです。「仲間」という「間」を。それを守るためには無断で放送をジャックするなど、自分の身も省みない。ある意味一番エキセントリックなキャラクターではないでしょうか。
ももちゃんの呼びかけによって生徒会室に集まる仲間たち。そう、彼等の「間」はももちゃんのお陰でより一層強固になったのです。学園長が語る「無駄ではなかった日々」とは、結果の如何は問わず、一緒にやり遂げた「仲間」がいたということなのではないでしょうか。今回の話はそんな「仲間」にまなびたちがなった瞬間だったのかもしれません。
そしてそこで「学園祭実施」の号令を行ったのは稲森光香でした。
「やろう。学園祭やろう。私、みんなと一緒に、大切なみんなと何かしたいよ。だから、学園祭やろう!今、この時に、私たちにしかできないことやろうよ!!」
そう、今回もまなび時空は登場しません。一話は光香とまなび、五話は光香と芽生、六話は光香とむつきの話。そして今回の九話はカメラごしの光香と桃葉の話です。これを追っていくとまなびストレートという作品が稲森光香を中心として描かれていることが分かると思います。そして今回。諦めかけていた芽生とむつきの心を動かしたのは光香の映像だったのです。
強烈なカリスマをもってまなびが蒔いた種は、仲間たちの中で芽を出しているのではないでしょうか。その芽はそれぞれの心に光を抱かせ、もはや「まなび時空」を必要とせずに仲間たちはお互いに光を放つことで一つになれるのかもしれません。そしてその中心となるのは稲森光香なのではないでしょうか?
まなびストレートとは「収穫」の物語でもあると思います。



で、金月龍之介
スラップスティックなギャグをかましつつ(ニニンがシノブ)、どうしようもない地獄を描いたりする。(ジサツのための101の方法)
生徒会での少女の友情を描きながら(まなびストレート)、同じ生徒会での毒電波の乱交パーティーを描く。(雫−しずく−)
熱い男を描きながら(アニメ店長)、醒めた目でこちらを眺めている。
結局一週間かけて考えましたけど、よく分かりませんや、金月龍之介。まあ、あれです。小説家や漫画家とは違って脚本家は作品の性質に自分を合わせるアメーバ的才能が無ければなれないものです。我を通すのではなく、そこで表現すべきノルマを果たす。それが脚本家の最低限にして最大の仕事ではないかとも思います。

手堅く無難にと申されればそのとおりに、エッジの利いたものをと御所望あればそのとおりに作文をお納めする、そんな非作家系の著述業を営んでおります。ブルーカラーの物語作者(C・大塚英志先生)です。
http://www9.ocn.ne.jp/~gengen/

月氏自身もブログでこのようなこと言っております。我々が脚本家に期待する「作家性」というヤツは、漫画家や小説家ほどは大きくないのかもしれません。脚本家はあらかじめ用意された設定、キャラ、舞台という絵筆を元に作品世界を構築します。しかしアニメという共同作業にとってはそれは一要素。監督や演出、作画監督、声優その他もろもろの努力が化学反応を起こす世界なのです。脚本家の作家性のみに作品の面白さを帰してしまうのは危険な事と言わざるを得ません。
しかし、それでもあえて、私は金月龍之介を追って行きたい。だって、変だもん。エロゲ小説で本格的に売り出して、アニメイトともパイプがあって、堂々とエロゲライターもやっておまけに1クールアニメを己の力量で裁く手腕。
これらの要素が入り乱れて一人の人格の中に納まっている作家。それはやはり金月龍之介只一人といわざるを得ません。
皆様。まなびストレートの今後の展開を追い続けるとともに、カオスな作家・金月龍之介にも是非注目を。


追伸
空の境界」映画版の脚本。金月氏がやんねーかなー。
そしてデンパっぽくしてくんねーかなー。