ユーフォーテーブルとメディアミックス

金月龍之介の作品には唐突にUFOがでてきます。何故なんでしょう?
答えは簡単、アニメ製作がユーフォーテーブルだからです。今日はユーフォーテーブルの製作体制と、今後のメディアミックスのあり方について考えていきます。
ユーフォテーブルは2000年に近藤光によって創設されたアニメ製作会社です。「住めば都のコスモス荘 すっとこ大戦ドッコイダー」で名前が知られるようになり、その後の「ニニンがシノブ伝」で一躍有名となるのですが、この会社の特色として以下のような点が挙げられます。


① 一クール完結ものを基本とする

基本一クール(十三話)ですね。脚本も金月龍之介が大半を書く場合がおおいです。これは京アニにも言えることですが、高いクオリティーを維持し、かつ物語にも統一感を持たせるために、中小スタジオは一クールぐらいが勝負するのにちょうど良いからではないでしょうか。この問題については後に述べます。


② エンディングがクレイアニメ

ユーフォーテーブルの作品のエンディングはクレイアニメになっています。これは社長の近藤氏によるとユーフォーテーブルの製作である事を表す商標の役割を果たしているとのことです。アニメ製作だけでなく実写の仕事もしているため、クレイアニメのような芸が細かいこともするのでしょう。


③ 独自のメディアミックス

ユーフォーテーブルは独自のメディアミックス路線をとっています。それまでの作品もメディアワークスのコンテンツの下請けとして、アニメを製作していたのですが、近年の「コヨーテラグタイムショー」や「がくえんゆーとぴあ まなびストレート!」など、近年の作品はユーフォーテーブル自社が抱える「たあたんちぇっく」という部門でコミックス製作も同時に行っています。



これら①〜③の要素を考えるとユーフォーテーブルの路線が見えてきます。それは「裾野を支配する下請け」です。
映像と他分野のメディアミックスの本格的なはしりは角川春樹による「犬神家の一族」であることは前にも触れました。角川一族のお家芸・メディアミックス。
サンタ特集第三章「犬神佐清は二度三度死ぬ」 - マントラプリの生涯原液35度
キャラ萌え二重構造論 - マントラプリの生涯原液35度
経営者が春樹から弟の歴彦に変わった今でも、メディアミックス精神は健在です。その証拠にユーフォーテーブルのアニメ製作の多くが、角川の傘下であるメディアワークスからの仕事だからです。で、本来でしたらメディアワークスが中心となって、小説ならこの人、アニメならこの会社、マンガならこの人と割り振りをしていくのですが、ユーフォーテーブルはマンガ、アニメを自社内で一本化して引き受ける体制を取っています。いわば上から降りてくる受注を大口を広げて囲い込む戦法を取っているのです。これは大変意欲的なことではないでしょうか。そしてこんなことを過去に、個人でした人を私は知っています。つぅか、いまでもやっています。
そう、メディアミックスの申し子・あかほりさとる
あかほりさとるは九十年代のアニメ、ラノベ、コミックス、ラジオのメディアミックスを個人の力で牽引してきたある意味偉大な作家です。小山高生の「ぶらざあのっぽ」出身の脚本家としてあかほり氏は頭角を現しました。そのあまりのメディアミックスっぷりに自分の原作とメディアミックスしたマンガやアニメは大団円を迎えながら、自分の原作だけは一向に終わらせることができないという、見習いたくない偉大さも持ち合わせておりますが、何はともあれ「脚本家ならばかくありたい」と衆人をして思わせる成功者なのは間違いないでしょう。
脚本家、小説家として多分野の囲い込みを行い、メディアミックスネットワークを作ったあかほりさとるに倣いて、ユーフォーテーブルもアニメ制作会社としてマンガその他の分野を抱き込んで、メディアミックスネットワークを自社内で形成し、拡大路線を図ろうとしているのではないでしょうか。鋭意製作中である映画版「空の境界」を含めて今後ユーフォーテーブルがどのようなメディアミックスを繰り広げていくのか、楽しみです。
劇場版 空の境界
明日は最終回「金月龍之介はどこへいくのか」をお送りします。ンガグッグ。