御都合主義で無ければならぬ!

「♪じゃじゃじゃじゃじゃじゃー。じゃじゃじゃじゃじゃじゃー。ボ・ボ・ボ・ボ。ボ・ボ・ボ・ボ。(ガシーン)輝くー太陽ー背に受けてー。鉄のー巨人のー叫び声ー。勝利の凱歌だー正義の技だー。すすめージャイアントロボー。たてージャイアントロボー。すすめージャイアントロボー。たてジャイアントロボー。すすめージャイアントロボー。たてジャイアントロボー。」
ということで(何がだ。前振り長すぎじゃィ!)こちらは1967年の実写版ジャイアントロボ*1の歌。今回見たのはアニメ版。今川泰宏監督*2の代表作・ジャイアントロボを見ました。

いやー、オモシロゥーイ!!もーサイコー!!
ジェットコースターのように繰り出される展開、激しいアクション。ケレン味あふれるストーリー。さいこーだー!!そんな中でも、この人!

そう、東方不敗。マスターアジアの原型になった衝撃のアルベルト(cv秋元羊介)です。悪の組織BF(ビッグファイア)団の幹部・十傑集の一人にして、いつもハマキを放さない紳士。しかしてその実態は縦にも横にもぐるぐる回る変なオッサン!!その変態的な身体能力は西方不敗の名を冠したいほどです。声も同じ秋元さんだし。
で、BF団と正義の国際警察機構が夢の永久機関・シズマドライブを廻って争うのが本作のあらすじです。恐るべきハイテンションで進む本作。そのぶっちぎりっぷりからご都合主義な箇所も見受けられます。例えばシズマドライブが引き起こしたメルトダウンによって世界十数年前まで崩壊の危機に瀕していたことを、主人公が知らなかったりなどなど。こういった部分を捉え、「ご都合主義だ」「無理やりすぎ」と言うのは簡単です。しかし世の中にはご都合主義でしか成り立ち得ない。「ご都合主義で無ければならぬ!」空間と言うものが確実に存在するのです。
ジャイアントロボ第1話はオトナとコドモの物語です。主人公の草間大作少年はジャイアントロボという巨大な力を操るパイロットです。しかし彼はまだ子供。仲間のエージェントである銀鈴や戴宗も彼を保護すべきものとして接しています。第1話にはそんな少年を気遣い、温かく見守るオトナたちの姿が描かれています。
大作の少年ならではの無垢さを表すのに使われるのが「シズマドライブ」に対する大作の憧憬です。公害にならない、半永久に稼動し続けるクリーンなエレルギー。無垢なるものを信ずる大作少年のこれまた無垢な心が「シズマドライブ」に投影されているのです。
しかし人は清いままでは生きていけません。真実を知ること。そう、それこそが大人になることであり、汚れるということ。大作少年はシズマドライブが人類を滅亡に追い込むような大規模な災害を起こしたエネルギーであったことを知ってしまうのです。そしてここから大作は保護される子供ではなく、自立した人間への道を歩みだすのです。
このビルドゥングロマンスを1話の中に凝縮するためには大作少年がシズマに対して純粋な憧憬を抱く必要があります。そうなると近き過去に起こった人類滅亡の危機を大作少年が知っていては都合が悪いことになります。そこでよりよい演出を行うために、設定としては矛盾した展開を選択せざるを得ないのです。そう、「御都合主義」の都合とは作者の保身や無知から来るものではなく、作品の完成度を上げるために行われることなのです。
近年「御都合主義」展開は笑われがちですが、これを笑うのは諸刃の剣です。冗談めいて笑っている間はいいのです。しかし本気になって矛盾を突き、作品を完膚なきまでに叩きのめそうなど思った日には、作品全体の演出や流れを踏まえたうえで「御都合主義」を笑う必要が生じてきます。それを怠って御都合主義を批判すること、それこそが御都合主義です。しかも自分のためだけに恣意的に構成された御都合主義が、作品全体のために意図的に構成された御都合主義を笑うのですから。
忘れてはいけません。ピエロはピエロを演じているのであって、ピエロそのものではないことを。あなたはピエロを笑うことができるが、ピエロがどうやってあなたを笑わせているかをあなたが論理立てて説明、ないしはピエロを実践することは困難だということを。踊るアホウと見るアホウ。どっちもアホウなのです。しかして踊りは人を楽しませる。では見ているあなたは踊りを論評して踊りよりも楽しいものを創造できるのか。あなたのクリティシズムは踊りに匹敵しうるのか。
「御都合主義」で無ければならぬ、立ち行かぬシーンは確かにあります。そしてそれを「御都合主義」と批判する際には我々は足元に気をつけなければなりません。いつかどこかで「踊るアホウ」になって他人に批判されるときが来るのですから。そのときあなたの御都合主義は人を楽しませているでしょうか?


んんー。まぁ、グダグダと描きましたけどようはどうでもいいのです。楽しければ御都合主義だろうが理路整然だろうが、自由自由。しかして他人の自由を侵犯してまで批判を楽しむにはある一定の覚悟は必要かと・・・。
ジャイアントロボは確実に楽しいです!こんな私のグダグダ話に付き合ってくれたのも何かの縁。見てください見てください。

凄そうでしょう。

*1:安藤三男が顔に銀粉塗り捲って頑張る特撮。サタンローズが蒔きついたガソリンスタンドの爆発シーンはの後の東宝特撮のガソリンスタンド爆破シーンには必ず流用される風物詩

*2:超監督ケレン味と原作クラッシャーぶりは富野をもおののかせる。ミスター味っ子機動武闘伝Gガンダムが代表作