ということで金田一耕助ツアーの続きです。
横溝正史疎開先に現れた土地の古老。彼は私に茶を勧めてきた。はたしてどのような惨劇がその口から語られるのであろうか?ここで起こった出来事はすべて真実である。
キャップにジーパン姿の土地の古老は、暖炉をはさんでポツリポツリと語りだした。
「ここらへんも横溝先生が来た時分には明かりも少なくて。夜は真っ暗でしたよ。そんなところも創作のヒントになったのかもしれんね」
古老はフランクであった。
「横溝先生は都会生まれで都会育ちでしょう。だからここいらの話が珍しかったんじゃなかろうかねぇ。旧家とか駐在とか、わしゃあんまり読まんのじゃが、そういったものが作品の中によう出てくるでしょう?」
分析も的確である。
「このうちは村の寄り合い所みたいになって。そこでは琴の怪談やら事件やら、旧家の風習やらをここの人がいろいろと話していったらしいね。わしゃ、あんまり推理小説は読まんのじゃが、あっちこっちから取ってきた材料をつなぎ合わせて、ああいったものは創作されるんじゃなかろうかねぇ。作家が全部一から考えるんじゃないと思うんだ」
・・・古老凄い。創作の何たるかを知っている。
「実際に作品の中に出てくる人名もこの村の人をもじって付けとるから、ここらの家の人はわかるよ。横溝先生と仲ようしとった加藤一(かとうひとし)さんって学校の先生がいての」
え?加藤一?どこかで聞いたことが。
「その人が転任先の土地の話を先生に聞かせとったらしい。津山にいたときの話とか、笠岡諸島での学校の話なんかが元になってる作品もあるじゃろう」
・・・八つ墓村に、獄門島だ。それに、加藤一といえば・・・。
「一さんには早苗さんっていう綺麗な妹さんと、千万太って弟さんがいて・・・」
おいおいおいおい。加藤=鬼頭。門島のメインキャストそのままじゃないですかぁ!?おまけに早苗さんといえば金田一耕助の唯一のロマンスの相手!!モデルがいたとは。驚愕すべき古老の昔語り。
まだまだ続きます。