真正のリアリストとは

真正のリアリストはドリーマーと呼ばれることが多い。なぜなら、「真実」は往々にして、人間世界の「常識」から乖離しているからだ。

そんなことを思い知らせてくれる作品。

重要なお知らせ - はじめてのC お試し版
id:hajicさんのオススメ文言につられて、見てみました。
この作品の主人公・相良宗介*1は凄腕の傭兵。そんな彼が一般的な高校生活を送ったらどうなるか…。本作はその恐ろしさと面白さを、宗介が次々と巻き起こす騒動によって示しています。
・下駄箱にラブレターを入れられれば、危険物を仕掛けられたと考え、下駄箱ごと爆破、粉砕する
・不良のケンカに対テロリストの理論を適用、相手の身内の情報を掴み、それをネタに相手を恐慌状態に陥れる
・軟弱ラグビー部をフルメタルジャケット顔負けの鬼傭兵部隊へと改造する
・ガールハントを狩猟と勘違いし、女性をトラップに嵌めて捕獲する

等等。現代日本に生きる我々には理解不能な傭兵の理論を以って、物事に対処していきます。彼の行動原理は傭兵、いやもっとありていに言えば丸腰の動物が取る行動そのものです。彼は、我々が何気なく享受している、いやそう思い込んでいる「安全」というものを信じていません。周囲には常に敵がおり、自身の安全を確保するために過剰な防衛本能と、「石橋を叩いても渡らず、破壊して自分で設営しなおす」匍匐前進の行動原理。これが基本なのです。
彼はさながら野人です。常に縄張りを保つためにキバを見せ、唸っている犬です。しかし彼の行動は生物としては我々よりも常識的な行動なのではないでしょうか。そう、「世界」というまやかしに対して油断をしない、いやできない相良宗介は真正のリアリストと言えます。
そんな彼に「常識」という手綱を付け、「学園生活」というスキルを調教する野獣使いがヒロイン・千鳥かなめ*2です。彼女によって学園生活を叩き込まれ、調教される主人公。宗介の持つ動物としての「現実」。かなめの持つ社会的人間の「現実」が拮抗し、化学変化する。而してどちらかにシフトしていくわけではありません。宗介は「常識」を取り込み、かなめもまた宗介の持つ「野生」を取り込んでいく。お互いがお互いの世界に染まって、どこにもない「現実」を作り出していくのです。
この作品は「サムソンとデリラ」でも、「美女と野獣」でもありません。「生物の現実」と「社会の現実」。どちらかがどちらかに対して優位なわけでも、劣っているわけでもないのです。その二つの間を揺れ、たゆたうのがドキドキを生み。ギャップを生み。ラブコメを生む。
そう、男女の持つ二つの異なる世界の出会い、化学反応、走る電気をぴったり表す言葉があるとすればそれは「ラブコメ」。hajicさんがおっしゃるように、「フルメタル・パニック?ふもっふ」は上質のラブコメなのです。

*1:cv関智一。男がガチで惚れる男とはこういうものか…。最強で鉄面皮でクールで素直でマメで臆病、そして天然。たまらん

*2:cv雪野五月。それにつけても犬夜叉のかごめといい、雪野五月は犬を調教する役が多いなぁ。「トライガン」や「プラネテス」でも野良犬っぽい男たちを調教してるしなぁ