日月惨翠図

速い、速すぎる展開。そして怒涛の勢い。「瀬戸の花嫁」は止まりません。視聴者を振り落としてもなお突っ走るジェットコースターの如く。

「瀬戸の花嫁」ライブソング SUN「your gravitation」

「瀬戸の花嫁」ライブソング SUN「your gravitation」

第7話「来訪者」見ましたよ。速いなー。展開もテンポもセリフも何もかも。この速さ。古の軍学者たちの多くも、速きことこそが最良の軍略と言っております。しかも拙速ではいけない。要所要所でトメを打ち、その味を噛み締めさせなければならない。「瀬戸の花嫁」はそこらへんもバッチリです。
今回登場するは燦の幼馴染にして天敵(と向こうが勝手に思っている)江戸前ルナ。そう、燦=サン=太陽。ルナ=月。いわば日月対決です。朝と夜、陰と陽。光を放つ二つの星は、古より物事の境界を区分し、世界を分割しました。本編でも例外ではなく、燦とルナのファンが派閥を形成し、学園は真っ二つに分かれます。もちろん長澄は置いてけぼり。相方のサル老師のありがたいんだか、ありがたくないんだかよく分からない格言を聞き、ひれ伏す始末です。そして翠星石こと巻ちゃんは何故かボロボロのひどい目にあっています。全てがジェットコースターです。かつイロイロなものをばら撒いていってます。「瀬戸の花嫁」のこの展開の速さを可能にしているものは一体何なのでしょう。
私はそれを「飲み込みの良さ」だと思います。普通の番組に出てくる、主人公を含めたパンピーの登場キャラクターは極道や人魚、アイドルといった別世界の人間と接するとき、そこに戸惑いや疑問を感じ、しばし思考停止に陥るものです。ですが「瀬戸の花嫁」のキャラクターたちは別世界の現実をすんなりと受け入れます。そして狼狽し驚きの叫びを挙げた次の瞬間には、もうその世界の住人と化してリアクションを取っているのです。彼らは迷ったり、悩んだりします。しかし、そのことで自分の手を休めたり、思考停止に陥ったりはしないのです。その世界に対して何らかのアクションを取りつつストリームの一部と化す。それがさらに大きな流れと化し、作品のノリとスピードを嫌がおうにも加速させるのです。
したがって「瀬戸の花嫁」を観賞する我々は「考えるな、感じろ」の精神で付き合っていくしかないのです。先週触れた「刑事フラグ」のように深読みしようと思えばできるところは多々あります。しかしそれよりも重要なのは作品のスピードに反射神経で反応することです。思考を通して遠回りするのではこの作品のスピードには追いつけません。我々は条件反射に近い形で、虚心で向かい合い、脊髄反射的に笑い、泣き、マサさんに「ウホッ」しなければならないのです。
ある意味、スポーツです。「瀬戸の花嫁」の観賞は。