私は組織が好きです。
いや、組織に忠誠を尽くすという意味ではなく、組織という結合形態が好きなのです。私が組織を好きになったきっかけとして、特撮があります。
特撮では悪はいつも組織を組んでいます。単独で悪をなすのはカゲスターの初期やレスキューシリーズ、デカレンジャー仮面ライダーブレイドなどそこそこありますが、その他の悪は大体が群れをなし、集団戦法を採っているのです。*1
一方の主人公側は、仮面ライダーをはじめ孤独に悪と戦うヒーローが大半です。相手が群れで来るんだからこっちも群れろよ。と、私なんかは思うのですが、多分組織化すると利害、保守、その他もろもろの思惑が入ってきて、入り混じり、齟齬を来たすのでしょう。ヒーローがヒーローたるには肩書きを持ってはいけないのかもしれません。
しかし、私は肩書きを持つ者が己の信念のために戦うのが好きなのです。孤独のヒーローの正義は組織に属していないことからまじりっけがないのと同時に、化膿したらとんでもないことになる可能性があります。ひどく独善的になる恐れも…。それに孤独のヒーローには捨てるものがない場合も多いです。家族や友人とかではなく、地位や名誉。ありていに言えば己のエゴに付帯するものを賭けて戦わず、正義を名乗るのです。
まあ、ぶっちゃけ正義のために戦ってくれなくても私にとってはよいのです。だから昔から悪の組織が好きでした。
ショッカーの大幹部に代表される人格と肩書きとプライドを持った男は、己の地位を守るため、組織の目的のため戦い、死にます。そう、漏れなく死ぬところがいいですね。現実では死んだものは残されたものにいいように解釈され、利用されますが、フィクションにおいては死なずにフェードアウトしていったものよりもその存在を焼き付けるのです。今もどこかで生きているであろう、明確な結末に至ることがないヒーローよりも、己固有の生き様、死に様を刻みつけ、歴史となった悪に、私は引き付けられるのです。
だもんでマッドギャランジェネラルシャドウの最後を思い出すといまでも涙が出てきます。
あと、組織なので死んでも補填可能というところがいいです。交換可能なものだからこそ「愛着」を抱くのです。唯一無二のものなど、おっかなくて触れませんし、近寄る気にもなりません。逆説的ですが我々人間は一人ひとりが別のものです。しかしどこか似ているし、交換不可能でもない。人身売買もできるし。賃金というシステムで数値化もできる。世界や企業にとってある意味身内にとっても人は「交換可能」なのです。悲しいことに。喜ばしいことに。
そう、「かけがえない」とは交換可能な者に特別に寄せる「愛着」を指す言葉なのではないでしょうか。
だから、孤独で唯一無二のヒーローよりも、交換可能で、それでいて己の愛を投影できる敵の幹部が好きなのです。かつそれを擁する組織が。


追伸:今。敵組織というものを考え、最も面白い試みをしているのがYes! プリキュア5ですね。中間管理職も下っ端社員も一話で切り捨てられないが、ネチネチと圧力とイヤミを言われ続ける。かつそれぞれが別のポジションであることを明確化している。当たり前の現実をヒーロー物で運用しています。斬新でした。

*1:ウルトラマンなどはカテゴリーからはずれるかもしれませんが、あの場合他の惑星の生物にと地球人の倫理を適用できるかが検討の余地があるので、保留ということで。