齊藤メソッドの方法論

最近、私は齊藤教信者とでもいうべき状態です。
いえいえ、なにも怪しげな新興宗教ではありませんよ。齋藤孝さんの著作を貪り読んでいる状態、ということです。
氏の本は3色ボールペンの活用法を中心としてハウツー本が主なものです。ただのハウツー本と違うところは、その論理、思考法はあらゆる分野を超え、生き方や考え方そのものに広く作用する点です。やや、哲学に近いものになっています。それでいて非常に具体的、かつ明快。
今回は自称・齋藤教信者として、氏の提唱する思考法をスクラップアンドビルド(破壊と創造)」という観点から検証してみたいと思います。興味がわいたら本を手にとってみてくださいね。
齋藤氏がまず行うことは破壊です。そう、我々の固定観念、いや、観念どころか思考法をも破壊するのです。3色ボールペンを例にとって説明しましょう。

三色ボールペン情報活用術 (角川oneテーマ21 (B-43))

三色ボールペン情報活用術 (角川oneテーマ21 (B-43))

3色ボールペンは
…客観的に最重要な部分
…客観的にまあ重要な部分
…主観的に面白い部分
という区分があることは前回もお話したと思います。何故3色にしなければならないのか。それは1色や2色では主観と客観の重要性を区別できないからです。ここで重要になるのは大事なところに線を引くこと、と同時に主観で大事なのか、客観で大事なのかを区分することです。
我々が普段意識する「重要な点」。しかしその重要性が主観に位置するのか、客観に位置するのかまで我々は弁別しておりません。それらを区分することでただ単に「重要」と考えている固定観念を破壊して、その上に主観と客観に区分された「重要」を再構築するのです。3色ボールペンを日常のあらゆる作業で使用するのは、新しい枠組みを構築するための修行なのです。
齋藤氏が破壊するもの、それは主に「固定観念」です。常識とも言います。我々が普段何気なく行っている「重要なものに線を引く」しかし、その重要は主体的な重要性か、客観的に見ても重要なのか、判別しながら生きているわけではありません。「重要なものは重要」で、済ませています。これを破壊し、より良い方法に組み替える快感、そしてそれを実践するのが自分自身という気概が齋藤氏の本を読むと湧き上がってきますね。
原稿用紙10枚を書く力 (だいわ文庫)

原稿用紙10枚を書く力 (だいわ文庫)

物事は最初からきちんと取り組み、順序だてて最後まで行くことを通例では良しとされます。何の疑いも抱かずに。本に関しても、「最初から最後まで精読するもの」という価値観を我々は持っています。しかし、こういった枠組みは誰が決めたのでしょう。また、枠組みに疑問を抱いて試行錯誤をせずにそれが最良のものであると妄信していることはないでしょうか。
しかし、これでは課題が多くなったとき困難に遭遇したときは、最初の取っ掛かりであきらめて、それ以上先へと進まないという事態も出立するのです。こういう事態は不真面目な人間に起こるのではありません。逆に真面目な人間こそが物事をきちんと進めようとして最初の取っ掛かりから先へ進めないのです。
文章を読んでいる限り、齋藤孝氏自身がおそらくこの性格だったのだと思います。氏は自分の性向を徹底的に洗い出し、「最初から最後まで」という「固定観念」を破壊することを思いつきました。
時間がない場合、本は目次を読んで必要な箇所を洗い出し、そこを3色ボールペンでチェックする。
文章は書ける所から書いていく。問題は解けるところから解いていく。
こうすれば時間オーバーになってもある程度の体裁と分量は整っているのです。読書量も論文もテストも。やれるところから、とにかく、やる。立ち止まらないために。
「最初から」ではなく「できるところから」。
段取り力―「うまくいく人」はここがちがう (ちくま文庫)

段取り力―「うまくいく人」はここがちがう (ちくま文庫)

で、この二つをつなぐのが「段取り」です。齋藤氏は料理の例えを頻発しますが、料理で言えば下ごしらえ。3色ボールペンであらゆるものを解釈していくのが材料集めの段階に当たります。で、物事に取りくむのが調理。「段取り」はちょうどその中間の位置に存在します。
普段から3色ボールペンを使い、本や物事の主観と客観、使える部分とそうでない部分を整理しておきます。次に3色ボールペンによって浮き上がった重要部分を配置し、組み換え、いつでも使えるような形にするのが「段取り」です。自分の課題に必要な部分を3色ボールペンで色分けされた書籍やメモから色事に抜き出し、配置する。大まかな枠組みを作るのに非常に効率の良い方法です。
この二つを常日頃から意識してボールペンを使用していけば、それだけで料理の下ごしらえ、つまりは準備が進行していくのです。で、材料はそろえて、下ごしらえしてあるという安心感を元に、取っ掛かりやすいところから課題や物事に取り組んでいける。これは非常に大きなプラスです。
全体を貫く「段取り」。そしてこの段取りこそが従来の価固定観念を破壊した後に、構築される齋藤メソッドの最たるもの、グランドプランなのです。その建材となるのが3色ボールペン。仕事を効率よく運ぶのが、「できるところから」やる思想です。興味ある方は是非お試しあれ。