永徳スゲー

今日は京都国立博物館でやってる狩野永徳展に行ってきました。凄かったです。
1ブットイ
とにかく線が太い。おなじみ上杉本「洛中洛外図屏風」やら肖像画やらでは抑えておりますが、大作の障壁画になると、もう。特に松が凄いことになっています。輪郭線が太すぎです、ありえません。
2笹うめぇ
笹の葉を書くのがすごくうまいです。多分筆に墨をベッとつけて、一瞬で判を押すようにスパスパ描いているのでしょう。しかもその描画線にためらいのかけらも見られない。手首のスナップだけで黒一色の笹の葉をそれらしく見えるように描く。こらは技巧とか何とかいうより、経験とカンの領域ですね。書の世界に近いもののような気がします。
3シワうめぇ
永徳が他の狩野派の絵師と一線を画す点。それは何といっても服のシワの描き方。上と同じように即興で描いているのでしょうが、その筆致が大胆かつ的確、おまけに強弱がこの上なく効いていて、それだけで陰影を表している。本当に天才のみがなしうる勘の世界です。永徳の真筆か否かを鑑定するのに最も有効な決め手は服のシワの書き方なんじゃないかな、と思っています。今回の出展作品では織田信長像に顕著に現れています。大徳寺所蔵のものは服のシワが的確、大胆、効果的で永徳だなぁと感じるのですが、模作とされる総見院の衣冠束帯の信長像は服のシワの線に前作ほどの精気がないのです。
4気違い根っこ
根っこが異常です。ありえないほど膨れ上がっており、何かの呪いのようにも感じられます。
5スキマペンタッチ
これは人物像や唐獅子図屏風なんかで顕著なんですが、永徳は輪郭線と輪郭線をきちんとつなげないことが間々あります。私なんかはフォトショップを使っているので、輪郭線をきちんと閉じないと塗りつぶしツールが使えない!!などと思っていますが、安土桃山時代にはそんなもの関係ありません。容赦なくスキマです。しかし、上述の服のシワ同様、このスキマがえもいえぬ迫力、及び陰影、間、とでもいったものを表現しております。勢いを優先するために筆法を無視する、マンガの技法に近いものがあるのではないでしょうか。
これが今回私が感じたスゲェ永徳ポイント。おかげで今回の展覧会は絵を見るというよりは「線」を見ていました。個々の描かれたパーツを見ると永徳の筆法は雪舟なみ、いやそれ以上のいい加減さがあるのですが、全体を通してみたときそのスキマも含めた美しさ、勢いが迫ってくる。グランドデザイナーなんだなぁ。と感じました。後は計算ではなく勘の人だと。
マンガ描いてる人、夏目房之介みたいにマンガを解体する趣味のある人にはこの展覧会はオススメです。線の重要さが切実さを伴って実感できますよ。