もはや雪に覆われてもいいころだ

十二月になりました。もはや雪に覆われてもいいころです。
空が白み始めるころが一番寒いこの季節。生命の危機を最も感じるこの季節。農閑期のこの季節。



冬の日の、ある雪の日の朝。見知らぬ地方都市の、見知らぬ駅前。宵越しの居酒屋をゆるりと出て、始発の時間に駅へ向かう。
薄雪が残るロータリーをシャリシャリと踏みしめながら、ちょっと滑りそうになりながら、駅に向かう。
通りは暗い、でも、うすぼんやりと夜の終わりを告げる空。雪はやんでいる。ひっかけている間に外では雪が世界を覆い、また去って行ったらしい。私の出立を待たずして。
黒服、赤ら顔の駅員さんを横目にホームに入る。国鉄時代の時計は変わらずに時を刻んでいる。時刻表のボードも国鉄時代のカウンターのままだ。
ホームにはまばらに人。線路にはうっすらと雪。そして雲のすき間から、月。
ぼおっと見上げたら少し、涙。水はいつも温かい。何気なく、泣く。そしてすぐ乾く。
ねずみ色の彼方から二つの目。定刻どおりにやってくる。
ほぉっと息が、空へと消えた。


冬ってこんなイメージ。